2017年ノーベル文学賞受賞で話題をさらったカズオ・イシグロ。
そんな彼の代表作の一つ、「わたしを離さないで」を読みました。
原題である英語タイトルは「Never Let Me Go」。
ネタバレの無いように感想を書いていきたいと思います。
カズオ・イシグロと聞くと、ノドグロを思い出す。
謎の多い導入シーン…
主人公は31歳女性のキャシー・H。終始、彼女の独白で物語は進んでいきます。
キャシーの職業は「介護人」。
日々「提供者」の面倒を見ていますが、現代社会の「介護」とはまた少し違うようです。
彼女は「ヘールシャム」出身であり、そこは非常に恵まれた施設だったようです。
彼女のヘールシャムでの友人たち、先生たちとの思い出が、淡々と語られていきます。
不思議な、不気味な世界観
キャシーが語るヘールシャムでの日々は、一見普通の学生生活、友人同士の接触のようです。
しかし、文章の節々にどこか違和感があり、不思議な、不気味な感じがします。
「完全におかしい」ではなく「少しおかしい」感じが続きます。
全容が明らかになったとき、「なぜキャシー含む生徒たちはそんなに落ち着いていられるのか?」とより不気味に感じました。
登場人物達は、とっくに運命を受け入れていたようですが、読者の立場としては、複雑な心境になりました。
繊細で丁寧な心理描写
物語の大半は、キャシーによる思い出の独白、つまり過去の事が現在時点で語り続けられます。
そのため、「当時の心境はこう」と「現在の思い返すとこう」と両時点から語られており、より丁寧な心理描写となっています。
学生としてのリアルな感情表現もあれば、特異な運命を決定された彼ら・彼女らならではの心理も。
いずれもキャシー以外の登場人物も含め、心の動きの表現の濃さが特徴的だなと感じました。
ネタバレは厳禁!にしました
普段「読書感想」を書く時は、「ネタバレ注意」で書いてますが、
この作品はネタバレ無しの方が遥かに面白いため、感想も核心に触れませんでした。
しかし、それくらいお勧めできる作品だと思います。
ボリュームもあり、文庫本で440ページほど。
これを書いている10月30日は「読書週間」だそうですので、
秋の夜長にじっくり読んでみてはいかがでしょうか。
おまけ・ノーベル文学賞と日本人
ノーベル文学賞って1901年からあるそうですね。
冒頭書いた通り、2017年受賞者は、日系人で初受賞となるカズオ・イシグロ氏でした。
ちなみに過去の日本人受賞者は、「川端康成(1968年)」、「大江健三郎(1994年)」の2人のみです。
川端康成は「伊豆の踊子」を昔読みましたが、
大江健三郎は読んだことがないので、教養として読んでみたいなあ。
蟹江敬三とは違うんですよね。
さらにおまけ・早川書房の本ってガタガタじゃない?
前にどこかで書いた気もしますが…
そこまで気にするわけじゃないですけど、早川書房の本って、けっこうガタガタですよね。
ブックオフの本を研ぐ機械には賛否ありますが、ここまでガタガタだとちょっと研いでみたくなります。