2日連続でカズオ・イシグロ作品の紹介です。
こちらは前回も書いた「わたしを離さないで」の次に出た作品のようです。
サブタイトルが「音楽と夕暮れをめぐる五つの物語」。
全五章の物語
舞台はヨーロッパ。時代は90年代でしょうか。
サブタイトルの「音楽と夕暮れ~」に象徴されるように、
全ての章で、音楽と夕暮れ(または夜)が関わってきます。
第一章「老歌手」:妻に歌をささげるスター歌手を手伝う話
第二章「降っても晴れても」:学生時代の友人夫婦の仲をとりもつ話
第三章「モールバンヒルズ」:音楽家夫婦と気ままなギタリストの話
第四章「夜想曲」:顔が原因で売れない音楽家が整形する話
第五章「チェリスト」:自称・才能あるチェリストに指導を受ける話
となっています。
夫婦の物語でもある
全ての章に共通するのが「夫婦」の登場です。
(五章はまだ結婚直前の状態ですが)
出てくる夫婦は、ことごとく関係が悪化しています。
主人公はすべて男ですが、妻(自身の、あるいは別の男の)に悩まされます。
時には感情的、時には何もかもお見通しの複雑な女性たち。
一方、男性たちは音楽の才能に恵まれているキャラもいますが、
要領はあまり良くなく、しかし憎めない性格をしています。
特に第二章の主人公レイは冴えない男ですが、
友情に厚く優しい人物(47歳というのは年不相応ですが)。
不思議な話は第五章「チェリスト」
※以下、多少のネタバレを含みます。
一番印象に残ったのは第五章「チェリスト」です。
ここでのテーマは「才能」です。
あらすじをざっと書くと、
チェリストである主人公・ティボールは、自身に才能があると信じていた。
ある日、演奏を聞いた女性が、「あなたには可能性がある。しかし私レベルの指導者がいなければ駄目だ」と言われる。
それ以降、ティボールは、その女性・エロイーズに師事を仰ぎます。
エロイーズの指導により、才能を開花させるティボール。
しかし、エロイーズは一向にチェロの手本を見せず、
楽器を弾く素振りすら見せません。
徐々に、本当に「チェロの大家(たいか)なのか?自称ではないか?」との疑念が高まるティボール。
それでも、上達している実感のあるティボールは、その核心に触れることができず、不信感を持ちつつも無視をしてエロイーズの元に通います。
エロイーズもそんなティボールの葛藤に気づいていました。
ついに、エロイーズは真実を語ります。
自分はチェロを弾くことはできないが、天才である。
天才であるがゆえ、並みの指導を受けて才能を壊す訳にはいかず、
11歳から今日までチェロを弾くことができずにいる。
ティボールも同じレベルの才能があるので、自分が才能を壊さないように指導をした。
そんな告白をされたティボールですが、意外とあっさりと受け止めたようです。
「才能」をそのような捉え方をした作品を初めて読んだので、
私も感心というか面白い視点だなと思いました。
音楽のつながり
本の感想から少し離れて、「音楽」について。
社会人になって周りをみると、けっこう音楽をやっていた・やっている人に出会います。
音楽という趣味つながりで、仕事につながることもあります。
NO MUSIC NO LIFE みたいな言葉もありますが、
私も何か楽器でもやっておけば良かったです。
とはいえ、年齢を言い訳にはできませんね。
私の父親も定年後にサックスを習い始めましたが、
楽しめているようで、1人カラオケで練習もしているようです。
良い事ですね(ボケ防止にもなるでしょうし)。
私も見習わねば。