『豆の上で眠る』 湊かなえ
文庫としては、2017年7月に発売されました。
タイトルはアンデルセン童話の「えんどうまめの上にねたおひめさま」という話に由来します。
以下、ネタバレを含みます。
あらすじ
主人公の安西結衣子は大学二年生。
1人暮らしをしていたが、母親が入院したため見舞いで帰省してきた。
病院に行く前に入った喫茶店で、姉の万佑子とその友人を見かける。
友人の目元には、幼いころに姉に負わせてしまった傷跡が見えた気がした。
その違和感をぬぐい切れず、過去の誘拐事件を振り返るうちに、
姉・万佑子の真実を知ることになる——
「えんどうまめの上にねたおひめさま」とは
物語のキーになるので、本文中にもあらすじはあります。
①床にえんどう豆を置き
②布団をいくつも重ねた上に寝て
③えんどう豆に気づいた人が王子の結婚相手
という童話らしいよく分からないストーリーだそうです。
本作品において重要なキーワードが「僅かな違和感」です。
それは僅かに背中でえんどう豆を感じる程度の、
注意しなければ気づかないような違和感。
そして、その小さな違和感が文章内に終始まとわりつく作品でした。
帯で台無し
帯でストーリーがややネタバレでした。
先入観無しで読んだ方が面白かったかもしれません。
「妹だけが感じる違和感。」も嘘でしたし。
帯の後ろ側を読んでなかったのだけが幸いでした。
本ものの家族とは
本作品のテーマは、「本ものの家族」とは何かでしょう。
誘拐された後、2年経って帰ってきた万佑子を名乗る人物。
その万佑子に、ずっと違和感をぬぐえない結衣子。
それはどんな思い出話でも、DNA鑑定でもぬぐい切れませんでした。
実際は結衣子だけではなく、家族全員が違和感を持ち続けていたのでしょう。
しかし、「本ものの家族」として現れた人物に対して、疑うこと自体がかなり勇気がいりますよね。
個々の人物の心境、特に結衣子の両親が何を考えていたのか…?
また、結果として姉に裏切られた結衣子ですが、
首謀者(≒犯人)もまた姉妹であり、彼女らの信頼関係は強固でした。
その辺りの皮肉のような描写もまた良かったです。
※なぜか「本物」ではなく、「本もの」と記載されていたので合わせています。
私の兄弟について
私は3人兄弟の真ん中で、上と下が違う性別かつ二人とも結婚しているので、
つまり義理も含めて兄・姉・弟・妹が全員いる構成です。
しかし、義理と本ものの兄弟にはやはり差がありますね。
実の兄弟にしても、私とは性格が全く異なるので、
普通に出会っていたら、それほど仲良くならなかったでしょう。
しかし私の兄弟は近隣に住んでいることもあって、
月一くらいで会って遊ぶこともあります。
それが過ごした年月によるものなのか?
血のつながりによるものなのか?
家族という言葉によるものなのか?
その辺りはこの歳になってもよく分かりません。
まあ分からなくてもいいことの一つかもしれませんね。