「そして名探偵は生まれた」 歌野晶午
久々に推理ものです。
帯の「オチが読めたと思いきやしてやられる瞠目のラスト!」という文言は、
先入観を持ってしまってあまり好きではないのですが、何となく手に取ってみました。
ただ意外と(失礼)面白かったです。
全4章の中編構成です。
あらすじ
1.そして名探偵は生まれた
影浦逸水(かげうらはやみ)は名探偵。
警察と共に殺人事件の操作にあたり、数多くの難事件を解決してきた。
しかし、影浦は金に汚い男でもあった。
警察に協力するのも、捜査協力金を貰う事が目的に過ぎない。
ある企業パーティで別荘に呼ばれた影浦は、そこで殺人事件に直面する。
しかし、金にならない仕事は受けたくないと、推理に乗り気ではない影浦。
みかねた助手・武邑大空(たけむらおおぞら)が、事件の解決に臨む…
2.生存者、一名
JR大*駅で爆破テロ事件が起きた。
犯人は「真の道福音教会」の熱烈な信者たちである。
実行犯である大竹三春は、他の実行犯の3人、幹部2人とともに、無人島・屍島に身を隠す。
捜査の沈静化を待ち、教会の手引きで海外へ高飛びする算段になっていた。
しかし、唯一あったボートに乗って幹部の1人が逃亡。
当面の食料は確保されていたが、完璧な無人島で戻ることはできない。
助けを求めても、警察に捕まれば恐らく死刑になる。
葛藤の中で5人は無人島生活を続けるが、次々と殺人事件が起こっていく。
5人の元・信徒達が争っていくが、事後の警察の発表は、「生存者1名、死亡者5名」。
果たして生存者は誰なのか?
他、「館という名の楽園で」、「夏の雪、冬のサンバ」収録。
意外な展開と結末
展開も予想外な部分が多く、先が気になる展開。
推理そのものに加えて、疑心暗鬼なストーリー展開で読ませる作品だなと思いました。
4章構成で1章あたり100ページくらいなので、推理小説の量としては、
ちょうどよく切り分けて読むことができたのも良かったです。
長すぎても設定や登場人物忘れちゃうし。
最後はちょっと
最終章の「夏の雪、冬のサンバ」は正直なところややイマイチでした。
登場人物が多国籍であることが特徴ですが、
そのせいか逆にストーリーがあまり頭に入ってこない。
オチも「誰だっけ?」でしたしね。
設定は基本に忠実
舞台はそれぞれ、山荘、孤島、大きな館と探偵・推理ものの王道でした。
そこにストーリーの変化球が少し加わることで、
王道だけど飽きのない新しい形だなと感じました。
まだまだ知らない面白い本がありますね。