「本日は、お日柄もよく」 原田マハ
タイトル通り、「スピーチ」に関する小説です。
本日はお日柄もよく、という言葉を実際に使ったことはありません。
セミナーの講師程度はしたことがありますが、スピーチと呼ばれるものをしたことがあっただろうか?
友人の結婚式で逆サプライズで指名されたことはありますが、3分くらい適当にしゃべっただけでスピーチとも呼べません(事前に言えよと思いましたけど)。
原田マハさんは本屋だけでなく、読書系のTwitterでもよく名前を見て気になってました。マハってマハラジャ感があるなあとか。
以下、ネタバレはないようにしますが、内容には触れます。
<目次>
あらすじ
主人公の二ノ宮こと葉は、製菓メーカーに勤める普通の会社員。
幼馴染で今も好意を抱く今川厚志と、新婦・恵里の結婚式に参加中、
つまらない社長のスピーチを聞いて居眠りして顔をスープに突っ込み、会場で笑いものになってしまう。
会場から一時離席したこと葉は、同じくスピーチに飽きた謎の女性に出会う。
会場に戻ると、その女性のスピーチが始まった。
先ほどの社長のスピーチとは全く異なり、笑いと感動に会場がつつまれ、こと葉も大きな感動を受けた。
その女性・久遠久美は、町内会から国会議員までどんなスピーチ原稿も書く「伝説のスピーチライター」。
死亡した今川厚志の父・民衆党議員の今川篤郎の「最後の代表質問」も手掛けていた。
感動したこと葉は、すぐに友人の結婚式のスピーチ原稿を依頼することにした。
その出会いをきっかけに、久遠久美に弟子入りする事になったこと葉。
高名な俳句作家である祖母や、ライバルであり同僚となったコピーライター・和田日間足からも学びを得て、徐々にスピーチライターとして目覚めていく。
そんな中、久遠久美の取引先である、最大野党の「民衆党」から解散後の総選挙のスピーチの相談が舞い込んでくる。
結婚スピーチと言うより政治の話
タイトルからは結婚式のスピーチの話を想像し、実際にそれが前フリになってますが、話の中心は政治の話。
あまり評判の良くない与党・進展党と、政権交代を目指す野党・民衆党。
そこに両陣営のスピーチライターがブレインとして加わって戦っていく構図です。
実際の「民主党」は2009年から政権をとりましたが、明らかにそれがモデルとなっています。
郵政民営化や後期高齢者医療保険など、現実の話も多く出てきますしね。
スピーチの極意
スピーチの極意といいますか、大原則は「静」と語っています。
「皆さんが静かになるまで5分かかりました・・・」的なことですね。
(これも実際には聞いたことないかも)
スピーチを聞いてもらうには、場を支配することが必要。
まずは「静」の状態になるまで溜めて、耳目を集めてから話し出すのがいいみたいです。
もちろん、語り出しも大事ですけど。
私はスピーチをしたことはあまりありませんが、講演やら記者発表は何度かしたことがあります。
私が心がけていることは、「ゆっくり話すこと」です。
緊張もあるのでしょうが、どうしても早口になりがち(面倒だから早く終わらせたいという心理もあるかも)。
あまり早口で矢継ぎ早に話すと、相手の消化する時間がなくなってしまいますからね。
「本日はお日柄もよく」のお日柄とは
何となく「本日はお日柄もよく」いう言葉は違和感を覚えませんでしたが、
天候や季節のことかなと間違えて覚えておりました。
そもそも「お日柄」は大安、友引、仏滅、友引、先勝、先負の6つの「六曜」のこと。
昔の中国で生まれた考え方で、吉凶判断に使われたみたいですね。
結婚式に向くのは、終日おめでたい大安と友引(正午は駄目)、午前中が吉な先勝、午後が吉な先負の4つ。
赤口や仏滅は事を成すには良くない日なので、この日の挙式で「本日はお日柄もよく」は使えないみたいですね。
また一つ、賢くなりました。
私が人前で話すとき心がけていること
ゆっくり話すことと先ほど書きましたが、もう一つは「もっともらしさ」です。
「もっともなこと」が言えればもちろんベストですが、明確な結論や答えの無い話もあるでしょう。
それでも、自信どころか過信があるかのように言ってしまえば、聴衆は意外と聞き入れてくれます(後で質問攻めにあったときも同様です)。
1対1や、1対少数くらいだと、言葉選びもある程度は慎重にした方がいいかもしれませんが、1対多数、多対多(だいたい5対5以上)くらいからは、個人の発言の細かい点まで気にされません。
それっぽく振る舞うということも、ときには大事ですね。