最近、金融機関の不正に関する報道が多いですね。
商工中金、鹿児島相互信用金庫、スルガ銀行…
そんな金融機関の不正について、元銀行員的に思うこと。
金融機関以外の方にも分かるように書いたつもりです。
<目次>
最近の報道
最近の報道について、リンクを貼っておきます。
商工中金の不正が発覚したのは数か月前なので、少しトーンダウンしてますね。
逆にスルガ銀行は、「かぼちゃの馬車」破綻含め、Yahoo!のトップにもしょっちゅう名前が出てきます。
上場企業で株価が大きく動いたことも、注目される一つの要因でしょう。
鹿児島相互信用金庫は、地方ということで私もそんなに目にしませんが、けっこう根深い問題を抱えているようですね。
金融機関の不正あるある
金融機関の不正には、そんなにいろんなパターンがあるわけではありません。
- 顧客から入金してほしいと預かったお金を着服
- こっそり顧客の投資信託を解約し、そのお金を着服
- 融資の約束をしたのに審査が通らなかったので、自腹で貸す
- 顧客の決算資料を改ざんし、融資審査に通るようにする
ただ、鹿児島相互信用金庫はもっと特殊な例があったようで、
- 支店長の権限を用い、顧客から個人的にお金を借りる
- 年金担保貸付の申し込みを長期間放置してしまったので、自腹で消費者金融から借りたお金を、その人に貸す⇒その借金を、別の顧客のキャッシュカードを勝手に使って返す。
面白い事例もあるので、公式ページのリンク貼っておきます。
「そうしんからのおしらせ」コーナーで、いろんな不正がみられるぞ!
不正が生まれる背景とノルマ至上主義
金融機関で不正が生まれる背景は大きく分けると2つ。
1つは、個人の財政的な問題。
これは遊ぶ金欲しさ~自分の借金返済など事情は様々ですが、いずれも個人の財布を満たすためのものです。
これはある意味、会社の不正だけでなく、一般的な犯罪と同じ動機ですね。
最終的には属人的な問題なので、会社が完全に防ぐのは難しいでしょう。
予防とともに、早期発見できるような仕組みづくりも重要です。
もう1つが、「ノルマの達成」です。これが非常に根深い問題として残っています。
ノルマの達成に含むか微妙ですが、「自分のミスを隠す」場合もあります。
金融機関(銀行)のノルマは、「月に〇億円の融資、〇億円の金融商品販売、〇社の新規獲得」などが一般的なものです。
これを満たさない場合、多くが指導というよりパワハラまがいの「叱責」を受けます。
そのためノルマを満たすことが至上命題になっています。
自腹で投資信託を買う、くらいなら、よくある可愛い話です(儲かるかもしれませんし)。
それが、顧客への無理な貸付になったり、挙句の果てには「利息も自腹で払うから、何とか借りてくれ」という不正かつ自分が費用を払うという、頭のおかしい話になるわけです。
個人の財政的な動機であれば、すぐに見抜けなかったことを除けば、組織というよりは個人の問題と言えるでしょう。
しかし、ノルマのために犯罪に手を染めるような職員まで出てしまう、しかもそれが一人や二人ではないというところに、金融機関のダークな面が全て出ていますね。
金融機関の組織・体質・文化の問題が、大いに含まれています。
短期的なノルマの弊害
金融機関の営業担当が、短期的なノルマで評価されるからそもそも良くないのでしょう。
金融機関(銀行)が批判される文言として「雨の日に傘を取り上げ、晴れの日に傘を押し付ける」商売だと言われることがあります。
これは、
「雨の日」=業況が悪い時(金が欲しい・手持ちが少ないとき)
「傘を取り上げ」=金を回収に走り、
「晴れの日」=業況が良い時(金が必要ない・手持ちが多いとき)
「傘を押し付ける」=金を無理に貸す
というものです。
無理やり新規先を獲得しても、2~3年で倒産されては回収もできません。
よくあるのはパターンはこれ。
「新規先企業にいっぱい融資した!
⇒営業担当は出世して異動
⇒数年後に当時の新規先企業がバタバタと倒産⇒
残された回収部隊が負担する、当時の営業担当は何のおとがめなし。
結局、自分の「短期的なノルマ達成」が最優先されてしまうことで、
公平な判断や中長期的な視点で顧客や物事を見る目が養われません。
ルールは悪い人がつくる
不正が起きると、不正を行っていない他の職員の負担も相当なものになります。
ある手口で不正が行われると、それを防ぐための対応策を取るよう、金融庁等から指導を受けることになります。
例えば、今まで一人で行っていた業務を「二人で確認して、確認した人はそれぞれ書類にハンコを押して、その書類は5年間保存すること」といったように、けっこうな厳しさになります。
こうして、不正を起こす「悪い人」が出るたびに「ルール」が作られていきます。
銀行の支店に行けば分かると思いますが、どこもかしこも監視カメラだらけです。
あれは防犯上ではなく、職員の監視という意味も多分に含んでいます。
例えば「顧客に大きな現金を返す際は、必ず誰かが立ち会う」というルールがあります(銀行によっても少し違うと思いますが)。
その際、後で本部職員が監視カメラをみて、「きちんと二人で返却しているか?」をチェックすることもあります。
こうして、非効率な事務作業・確認作業・ルールが追加され、「生産性向上」とは程遠い企業体質がさらに強固なものになっていくのです。
こういう事情は分かっているので、銀行の窓口で面倒な手続きを頼まれても、「まあ仕方ないか」と同情する気持ちになります。
凄く個人的な意見
スルガ銀行は、競合先として噂はいろいろ聞いておりました。
決算内容を見て「これは貸せないな…」と思った企業であっても、取引銀行が「スルガ銀行」だった場合が何度かありました。
私の所に融資の相談に来た際、審査状況が悪く少し渋るそぶりを見せると、「それならスルガ銀行で借ります」と言われたこともあります。
その頃は「スルガ銀行はずいぶん攻めた融資をするなあ」と素直に思ってましたが、不正のオンパレードだったとは。
金融機関の内部統制の「原則」は、「性悪説」であるべき(実際、変な人も多いし)。
これは金融機関だけに限らないかもしれませんね。
金融機関社員、特に「銀行員」が一定の地位を認められていたのも今は昔。
もっと気持ちを引き締めてもらいたいですね。と、自分にも言い聞かせておきます。