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【読書感想】「余命10年」いかに生きて、いかに死ぬか※ネタバレ含む

『余命10年』 小坂流加

本の帯によると、SNSで話題沸騰、30万部突破だそうです。

10万部でベストセラーと言う時代にすごいことですね。

SNSで話題沸騰と言うことは、若者が読んでいるということは分かります。

でも、おじさんだって読んでもいいじゃない。

 

 

以下、すぐにネタバレを含みます。

 

 

あらすじ

20歳になる高林茉莉は、数万人に1人という不治の病にかかり、余命10年と告げられる。

2年間を入院で過ごし、22歳になった茉莉は、実家に戻って限られた人生を過ごしていく。

死への恐怖や周りからの同情を避けるため、昔から好きだった漫画制作やコスプレなどに熱中していく。

 

病気のせいで恋をしないと決意していた茉莉だったが、同窓会で小学生の同級生だった、真部和人と再会する。

和人は、東京の茶道の家元の跡取りであったが、決められた運命に逆らうかのように、家を出ていた。

和人から、茉莉が初恋の人だったと告げられ、交際もスタートする。

その後、和人の葛藤や愛情にも触れながら、限られた命とその「後片付け」を行うため、

茉莉は多くのつらい決断を実行していく。

 

どのように生き、どのように死ぬのかに余命は関係ない

この作品のテーマは、間違いなく「限られた命」ということでしょう。

20歳にしてあと10年と告げられるのはどんな気持ちなのでしょうか。

しかし、茉莉は「10年」と告げられているからこそ、その間を懸命に生き抜くことができました。

 

好きな漫画やコスプレ、それを通じた友人達に夢中になってる間は、生き生きとした描写となっています。

「夢中になれるものが いつか君をすげー奴にするんだ」というドラゴンボールの歌詞もありますが、夢中になることがあるのは良い事ですね。

生への活力を与えてくれる。

 

普通、人の余命は全く分かりません。

たぶんあと100年は生きないでしょうから、最大でも余命80年くらいでしょうか。
10年と80年と言われると全く違う数字ですが、余命が決まっているといえば決まっています。

しかし、こうしてブログを書いている私だって、書きながら死ぬかもしれません。

これを誰かが見ているということは恐らく書き終えてはいるのでしょうが、

はてなブログには予約投稿をしているので、これが公開される前に死んでいるかもしれません。

そういう意味では、残りの人生をどう生きるか、そしてどう死ぬのかは、誰しもがいつでも考えるべき課題でしょう。

 

死ぬのは怖い?

現実的な死の恐怖を味わったことは、10年以上前にトラックにぶつかりかけた時くらいのものですが、

(洋服をかすめただけで、結果としては何ともなかったけど)

死んだことがないので、その直前がどれくらい怖いものか分かりません。

 

徐々に体が弱っていき…みたいな衰弱死などは単純に怖いですね。

事故など一瞬で死ねれば楽だろうとは思いますが、一瞬で死んだ人の話を聞いたことがないので、「いや、意外と大変なんすよ」ということもあり得ますよね。

この後書きますが、生き続けたいとも特別思いませんが、死にたいかと言われるとそうでもないというのが今の気持ちです。

 

死ぬときはひとりだ(少し暗い私の話)

私も20代後半頃は体を壊した関係もあって、診断こそされていませんでしたが半ばうつ状態でした。

当時の私しか知らない人は、私が笑っているところすらあまり見たことはないでしょう。

毎日、不眠と戦って意識がもうろうとしながら、「このまま息を止め続けたら死ねるかな?」等と考えていることが多かったです。

ですので、当時の事はほとんど記憶がありませんし、今思えばあっという間でした。

幸い(?)、仕事は簡単でしたので、そんな状態でも続けられました。

 

当時からずっと思っているのが、「死ぬときはひとり」「手に入れない方が幸せなものもある」ということ。

当時、私を見かねた女性から交際を誘われることも2度程ありました。

私も30近く、先方が年上だったため、どうしても結婚を意識せざるを得ない年でした。

 

で、渋々お会いして、先方といい雰囲気を何とか作ったとしても、

私が「長く生きたいと思わない。だからあなたとの結婚や将来など考えられない。早めに私から離れた方がいい」と強く思っており、また、相手からの積極攻勢をにも正直にそう伝えてお断りしておりました。

今にしてみれば、少し冷たかったかもしれませんけどね。

 

今回の作品の茉莉も、ほぼ同じような気持ちから和人に辛く当たっていました。

どうせすぐに別れるのであれば、手に入れない方がお互いのため。

あの頃のことは、そのうち気持ちの整理も含めて記事にするかもしれませんが、

20代をそんな気持ちで過ごしたおかげで、今でも特定の交際相手を持ちません。

 

✖諦めが肝心 〇諦めも肝心

まあ今ではある程度快復して、日々こんな感じになっておりますが、

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将来を悲観して身軽でいることは、それはそれで悪くはないと思っています。

 

幸福に生き、幸福に死ぬということは、覚悟の問題だと思っています。

覚悟は絶望を吹き飛ばすからだッ!とジョジョ6部でプッチ神父も言っておりました。

 

この作品でも、茉莉は「幸せになると死ぬのが怖くなる」という理由から、和人を遠ざけ、様々なものを諦めていきます。

そうやって覚悟を決めて切り捨てていくことは、必ずしも死を間近に控えた人だけではなく、これから長く生きていく間にも役立つ思考法の一つだと思います。

それが万能とは思いませんけどね。

 

粗を探すようで恐縮ですが

「これまでこの病気で生きた人でも、最長10年」というのがこの作品の冒頭であった説明のため、

「MAX10年だから、元気なのはせいぜい5年くらいか…?」と思って読んでいましたが、割と茉莉ちゃんは元気です。スキーに行ったり、飲み会に行ったりと。

 

時々体調の悪い描写もありますが、きっちり10年は生きる(生きられるつもりでい続ける)というところに少しだけ違和感。

テーマが「限られた生」についてですから、10年というのは単なる一区切りであって数字に意味はないと思いますが。

 

文章・表現は少しカジュアル(きつい言い方をすればやや稚拙)ですが、これからの生について、そして死について考えるきっかけとしては、スっと入りやすいのではないでしょうか。

 

小坂琉加さん(作者)について

…とここまで書いて、ふと作者は何歳くらいなんだ?という疑問がわきました。

おじさん目線から見ると考え方も若いし、表現も若者っぽいなあと感じたので。

そうしたらなんと、小坂琉加さんは、具体的な年齢は分かりませんが、2017年に若くして亡くなったそうです。

また、死因は本作品の茉莉と同じ肺動脈に関する病気とのこと。

死して尚、小説がヒットして多くの人の目に触れたことは、良かったように思います。

 

明日死ぬとしたら?

明日死ぬとしたら何をするでしょうか?

この手の質問ってよくありますよね。最後に何を食べたいとか。 

夢中になれるものもありませんので、逆に今のところ後悔らしい後悔もありません。

それでも実際に死の間際には何か出てくるかもしれませんけどね。

 

パッと思いつくのは、健康ならば、親兄弟にあいさつくらいでしょうか。

無神論者の私でも、最期くらいは身内の幸福を祈る人であってほしいと、自分のことながら思っています。

皆さんは何がしたいですか?

 

 

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