『シャーロックホームズの冒険』コナン・ドイル著 延原謙訳
シャーロック・ホームズと言えば、エルキュールポワロや(刑事だけど)コロンボとも並んで世界一有名な探偵の一人でしょう。
日本で言えば、金田一耕助、明智小五郎、最近なら名探偵コナンですかね。
ちなみに本書は初版が1953年、そして私が買ったのが2018年6月に130刷目の文庫版です。
130回も増刷されてるってのがすごいですね。
そもそも原作が100年近く前ですから、それ自体がすごいことですが。
あらすじ。ではなく本の構成
推理小説であらすじを書くのも難しいので、本書の構成について。
本当は「冒険」と称されるシャーロック・ホームズシリーズは、十二編からなるそうですが、これは文庫版なので十編に絞り込まれたとのことです。
そうなるとあと2つが気になりますが、もう買って読んでしまったので仕方ない。
本書には、以下の10個の短編が収録されています。
- ボヘミアの醜聞
- 赤髪組合
- 花婿失踪事件
- ボスコム谷の惨劇
- オレンジの種5つ
- 唇の捩れた男
- 青いガーネット
- まだらの紐
- 花嫁失踪事件
- 椈屋敷
だいたい、1個当たり40ページ前後ですので、それほど時間をかけずに読むことができます。
ザ・推理小説、ザ・探偵もの
探偵の古典ともいえる本書ですが、さすがにザ・推理小説という感じですね。
探偵事務所を営むシャーロック・ホームズのところに、少し奇妙な依頼がやってきます。
その謎を解くために、ホームズと相棒のワトスンが方々を巡り、話を聞き、張り込み、潜入し、謎を解明していきます。
謎を解くのはもっぱらホームズの役目で、ワトスン君は、読者目線でホームズの思考を伝える役割を持っています。
こうした役割分担を持たせたというのも、今となっては当たり前でも探偵小説が世に出始めた頃には斬新だったんだろうなあと思います。
そうでないと、天才キャラであるホームズがめちゃくちゃ独り言を言わない限りは読者に意図するところが伝わりにくいでしょうからね。
推理力=知識×観察力×想像力?
名探偵と言えば推理力ですが、推理力とは何なのでしょうか?
まず必要なのが知識。これはお勉強の問題ですね。
ホームズも、作中で「オーストラリア人が使う呼び声」を知っていたり、「インドの毒蛇の習性」を知っていたりと博学さを推理に使っています。
次に観察力ですが、これが一番理解しやすいですね。
ホームズで言えば、ワトスン君の自宅の洗面所の窓の位置を言い当てています。
- ワトスン君は几帳面なのでヒゲをきちんと剃る
- しかし、左ほほの部分は少し剃り方が甘い
- 左側が暗い可能性がある
- 太陽の光でヒゲを剃っているが、光は右側から当たっている
- したがって窓は右側にある
※それは右利きだからとも言えるのでは?と思いましたが、小説ですからね。ワトスン君の利き腕は知りませんが。
想像力も重要な要素です。
知識と観察によって事実を分析したのち、それをどんなストーリー(=推理)として組み立てるのかは、想像力に関わってきます。言い換えれば発想力ですかね。
ある事柄が、事件にどう関係しているのか?
その因果関係について、想像力に乏しければ解決しなかった事件もあるでしょう。
そして何より、推理力と言うより探偵に必要なのは体力でしょうね。
ホームズも古い資料を調べつくしたり、相手を尾行したり、現場を飛び回ったりと体力勝負で解決に結びついています。
気力と精神力も必要ですが、体力が前提にあることは間違いないでしょうね。
TVドラマ「エレメンタリー ホームズ&ワトソン」
AmazonPrimeにて「エレメンタリー ホームズ&ワトソン」というドラマを見ていると先日の記事にてご紹介しました。
ドラマにも出てきたアイリーン・アドラーやレストレード刑事なども、本書に出てきています。
時代背景が全く異なりますし、ホームズの性格やワトスン君は性別まで入れ替わっていますが、共通点と違いを見比べるのも面白いのかもしれませんね。
ここでドラマの方の話にも少し触れますが…
AmazonPrimeにて公開されている分として、シーズン5まで観終えました。
シーズン4~5に入り、完全にオリジナルの方向に進んでいます。
1話完結の話も少なくなり、探偵モノというよりは警察モノまたはヒューマンドラマになってきたように感じます。
あと、少しストーリーが投げっぱなしになったかなあと。
シャーロック・ホームズの父親・モーランドも、適当に終わって出てこないですし。
おまけ:握力×スピード×体重=破壊力
上に推理力=知識×観察力×想像力と書いていて思い出したのが、
「握力×スピード×体重=破壊力」という理論(?)。
皆さんもご存知の通り(?)、漫画「刃牙シリーズ」における花山薫のパンチ力のお話です。
彼はスピードキャラではありませんが、握力と体重は相当なものでしょう。
さてパンチ力ですが、体重とスピードが影響するのは素人にもわかる気がします。
ボクシングのフェザー級とヘビー級で考えれば、シャドーボクシングを見ただけでも威力の差は感じ取れます。
問題は握力。これがパンチ力にどう影響するのでしょうか?
拳を握らずにパンチを繰り出したところで威力がないのは分かりますが、握力が強ければ強いほどいいかというと、それは違うような気がします。
そして、シャーロックホームズの冒険の話だったのに、漫画の理屈について語り始めたことも、違うような気がします。
というわけで、おしまい。
改めて感想としては、短編としてもまとまっているのでオススメってことで。