えー、毎度ばかばかしい小噺をひとつ。
はちきん
えー、昔から土佐の女は「はちきん」と申しまして、それはそれは気が強いことで有名でございます。
熊公の家に嫁いだおミツも、正にはちきんというような気の強い女でした。
しかしこのおミツ、熊公の家に嫁いだばかりの頃はしゅんとしていたが、だんだんふてぶてしくなり、家事もやらねえし旦那をたてることもしやしない。
かたや熊公、すっかり気が弱くっていつもおミツの言うがまま。
家事も仕事も自分でやっていて、だんだん不満が溜まってきたが言い出せねえ。
しかししかし、ある日、ついに溜まりかねた熊公が、
「ミツ、俺は疲れた。もう別れちゃくれねえか」とぶちまけた。
驚いたのはおミツ。
今まで気の弱かった熊公が離婚を突き付けてきたんだから。
ミ「お前さん、何だって急にそんなこと」
熊「お前は家でごろごろしてるばっかりで、家事も仕事もやりゃしねえじゃねえか」
ミ「やだね、何をいまさら、そんなこと」
熊「今更ってなんだい。そのあいだ、俺はずっと我慢してたんだぞ」
ミ「そんなこと言って、あたしがいなくて大丈夫なの」
熊「今だって全部俺がやってるじゃあないか」
そんな言い争いが続いたが、さすがのおミツも旦那から別れろと言われちゃあ仕方ない。
とうとうおミツが折れることになった。
ミ「今まで悪かったよ。今度からはちゃんとアンタをたてて、家事もやるよ」
熊「分かってくれればいいんだよ」
ミ「それじゃ早速、久しぶりに竿でもしまおうかね」
熊「竿?物干し竿ならもう家の中にあるじゃねえか」
ミ「やだねお前さん。お前さんに付いてる竿を中にしまうんだよ」
お後がよろしいようで…
なぜ急にエロ小噺をしたのか
オチが分からなかった人がいるか分かりませんが、下ネタオチですね。
この小噺についてですが、友人の結婚式で披露されたものです。
もちろん私が喋ったわけではありませんよ。
高知出身の花嫁側の友人として式に呼ばれていったのですが、その際に新婦の親戚代表がこの話をしておりました。
新郎は東京の人間でしたから、「高知の女性と結婚するのはこういうことだ」という話をしたかったのでしょう。
それがまさか、こんなエロ小噺とはかなりの衝撃を受けました。
10年経っても(一部うろ覚えですが)覚えているほどに。
そして厳かな結婚式という場で、100歩譲って友人代表ならまだしも、花嫁の伯父としてこんな話をスピーチで披露できるという豪胆さに、スタンディングオベーションを送りたかったです。(会場は冷え切っていましたけどね)
しかし、友達として呼ばれたけど、新婦の他に誰も知り合いがいない会場ではそれもできなかった。
そんな淡い思い出の詰まった小噺でした。
来月、数年ぶりに結婚式に呼ばれることになったので思い出しました。
スピーチの機会があればこの話をしたいと思います。ないけど。
余談ですが、「はちきん」をWikipediaで調べると、名前の由来もアレな感じでした。
本当かどうか分かりませんけどね。