「鎌倉資本主義 ジブンゴトとしてまちをつくるということ」 柳澤大輔
サイコロで給料がプラスされる「サイコロ給」など面白法人を名乗る、カヤックの社長・柳澤大輔氏が書いた本。
上場企業でありながら、鎌倉市に本社を構えるカヤック。その鎌倉での取り組みについて書かれた本ですが、貨幣経済・通貨主義への疑問を投げかける本となっています。
- 「鎌倉資本主義 ジブンゴトとしてまちをつくるということ」 柳澤大輔
- 面白法人カヤックとは
- 本書の主張について
- 地域資本主義とは
- 経済資本
- 社会資本
- 環境資本
- しかし、金がないと
- 有名なサイコロ給について
- まちの社員食堂に行ってみた
面白法人カヤックとは
正式名称ではもちろんありません。
会社名でふざけているのは、「俺の株式会社」とギネスに最長企業名として載っている「あなたの幸せが私の幸せ(略)」だけで十分です。
何か面白いことをしようというのが、ある意味社訓になっており、行動原理となっています。
私が入社できたとしても、「なんか面白いことやってみろよ」という圧に耐えきれないことでしょう。
(そんなブラックじゃないと思いますが)
本書の主張について
資本主義の今の世の中では、一番重要視される価値判断は貨幣価値です。
何かをやるには儲からなければならず、逆に儲からないこと、例えば寄付やボランティアは金銭的余裕がなければできません。
明日の食べ物を買うのにも苦労してるのに、(無償)ボランティアやる人はいないでしょう。
一方で、その貨幣価値以外に価値を見出すことが、資本主義偏重の世の中では重要ではないかというのが、私が受け取った本書の主旨です。
地域資本主義とは
代わりに本書で主張されているのが、地域資本主義です。
地域資本は、3つに分類されており、これにより地域の幸福度が決まると述べられています。
1.地域経済資本(財源や生産性)
2.地域社会資本(人とのつながり)
3.地域環境資本(自然や文化)
これらについて、本書というよりは私の意見について述べて行きたいと思います。
経済資本
1つ目の地域経済資本は、これまでの資本主義と同じく、要は銭金、マネーの問題です。まあ分かりやすいですね。
社会資本
そして、2つ目の地域社会資本は人とのつながり。これは評価が難しいです。
SNSなら、いいね!の数などで、多少は測れるかもしれませんが、地域の人と人との交流を図る指標は難しい。
一つの解決策として、本書では「地域通貨」が提案されています。
世の中に数多ある地域通貨、皆さんはご存知でしょうか?
最近また流行りつつあるように感じます。
例えば、千葉県木更津市では「アクアコイン」という電子地域通貨が注目されています。
地域通貨の一番のメリットは、結局はお金の話ですが「地域のお金が外に流れない」ことにあると思います。
地域通貨で貰った分は、その地域でしか使うことができないため、必然的に他の所や、ましてやAmazonでは使えないわけです。
そこにお得感を追加、例えば地域のボランティアをやったら〇〇コイン、というようなメリットを付与することで、社会活動にもつながりつつ、地域内のお金と人の交流を上手く回すことができます。
ただ、多くの地域通貨が直面するように、一定量が常に流通しなければなりませんし、そもそも儲かる仕組みとは言い難いので、行政などが多少の負担をしなければなりません。
でも、地域交流・地域経済の活性化においては、一つの選択肢となりうるでしょう。
キャッシュレス決済がブームになりつつありますが、そのプラットフォームにうまく迎合できれば爆発する可能性もあります。
逆に乱立しすぎるのも良くないんですけどね。
環境資本
3つ目の地域環境資本についてですが、これも評価指標を持つのは難しい。
本書でも、ここについてはあまり触れられていないように感じました。
自然ならば、緑化率や耕作放棄地の割合などが評価指標として該当するでしょうか。
文化は更に難しいですが、分かりやすいもので言えば文化財の登録数などですかね。
ただ、これは1つ1つが重たいので、頑張ったからと言って増えるものでもありません。
文化というのは、地域に昔から伝わるものであり、客観的な評価をするものではないと私は思います。
しかし、金がないと
以上のような3つの資本がバランスよく高まることで、幸福度が高まると本書では述べられています。
ただ「幸福はお金じゃない!」というのは正論だと思いますが、そう言う人は本当にお金に困っている人ではないんですよね。
お金に余裕がないと、人との交流だとか、地域の文化保存だとかも二の次になってしまいます。
・・・・という考えが良くないのでしょうかね。
人との交流があれば、個人に現金はなくても物々交換や助け合いで生きていけるかもしれません。その方が幸福なのかもしれません。
それは素晴らしい世の中なのかもしれません。
ただ、私はお金が好きです。ほしいです。
有名なサイコロ給について
カヤックで行われている「サイコロ給」は、文字通りサイコロで給料が決まるもの。
とはいえ当たり前ですが、毎月の給料全額がサイコロで決まるわけではありません。
給料の上乗せ分として、サイコロの目×1%が決まるそうです。
給料30万円の人ならば、1が出れば+1%(3000円)、6出れば+6%(18,000円)。
全額でやるなら、サイコロの目×10万円くらいならやってもいいか・・・?
まちの社員食堂に行ってみた
カヤックでは地域で必要なものは地域でという考え方に基づき、「まちの〇〇」というものをいくつか建ちあげています。
実はカヤックには仕事で訪問したのですが、その帰り道にわざわざ鎌倉まで来たので、
その中のひとつ、「まちの社員食堂」に寄ってみました。
ちなみに、本書を持っていくと、100円引きでした。
まちの社員食堂は、カヤックや鎌倉市役所、その他市内企業30社程度が交流できるように参画する、みんなが使える社員食堂です。参画企業は、100円引き。
そして出店者は週替わりで地域の飲食店などが出店しています。
つまり、今週は中華でも来週はイタリアンかもしれません。これは楽しい取り組ですね。
店内は木目調で落ち着く感じ。
カウンターもあって、オシャレな雰囲気。夜は飲み放題もあるとか。
この日は、鶏肉のソテーでした。小鉢もあってバランスは良さそう。
味もなかなか美味しかったです。
アイディアを生み出すのは何とかできるかもしれませんが、それを形にしているというのは素晴らしいと思いました。
まさに「ジブンゴト」なんでしょう。
こういう企業が地域に一つでもあると、それはそれで面白いんだろうなあ。と、「タニンゴト」にしたがる私は思いました。