「ビッグ・クエスチョン <人類の難問>に答えよう」 スティーヴン・ホーキング著(青木薫 訳)
車椅子に乗った天才ホーキング博士。
難病にありながら研究を続け、2018年に逝去されました。
彼の凄さというのは物理学上の知識が必要なので正直なところよく分からない部分もありますが、それでも良い本でした。
ビッグ・クエスチョンとは
ビッグ・クエスチョンとは、和訳によると「人類の難問」や「究極の問い」とされています。
本書では、以下の10個のビッグ・クエスチョンが提示され、ホーキング博士が回答します。
- 神は存在するのか?
- 宇宙はどのように始まったのか?
- 宇宙には人間のほかにも知的生命体が存在するのか?
- 未来を予言することはできるのか?
- ブラックホールの内部には何があるのか?
- タイムトラベルは可能なのか?
- 人間は地球で生きていくべきなのか?
- 宇宙に植民地を建設すべきなのか?
- 人工知能は人間より賢くなるのか?
- より良い未来のために何ができるのか?
例えば 「神は存在するのか?」について、ホーキング博士は否定的です。
世界の物理法則そのものを神と呼びたければ呼んでもいいし、いわゆる宗教上の試練や掲示を与えるような「人格を持った神」という存在は否定しています。
神がいようといまいと関係ないというスタンスが正確でしょうか。
この点は私にも結構しっくりときました。
ただ私も無神論者ではありますが、宗教上の神への信仰自体は否定できませんので、「いると思いたければいるし、そこまで思いこめるならいた方が幸せ」だと思います。
「より良い未来のために何ができるのか?」
ホーキング博士の回答は「限界というものは信じていない。全ての人が科学リテラシーを持ち、科学技術の進展についていこうと思うことが必要」と述べています。
平たく言えば「多くの事に興味や疑問を持ち、その解決を目指すこと」ということです。
やはりホーキング博士を「病気」という色眼鏡で見てしまいますが、しかしそんな彼が言うからこそより深みのある言葉になるのではないでしょうか。
20歳を超えた辺りで発症し、徐々に筋力が衰え声も発せなくなり…
それでも研究を進める一方、バラエティドラマにも出ていたり…
物理学の天才であったのは間違いないでしょうが、努力や諦めない天才(秀才?)でもあったのでしょう。
難しい所はスルーしてもだいたい平気
難しい部分は、正直なところ全く分かりません。
「M理論では空間は10次元なのだが(時間で+1次元)…」
「ある点における波動関数の大きさは、その点で粒子が見いだされる確率を与える。そしてある点から別の点へと波動関数の値が変化する速さが…」
「ブラックホールの質量変化を、事象地平の面積変化に結びつける同様の法則を見出した…」
パッと見で理解するのは無理ですし、丁寧に読んでもよく分かりません。
理論物理学の世界というのは、たぶんどこまで学べるやら…
宇宙の起源は、今でこそ「ビッグバン」と言われていますが、「そこで時間が始まった」とかそういった概念が納得できているかというと、いまいち感覚的に腑に落ちてはいません。
それでも彼の丁寧な思考や理路整然とした論調に触れることは、良い刺激にもつながりました。
【物理学の入門書】