「妖し」恩田陸、米澤穂信、村山由佳ほか計10名 著
読書感想記事を書くのも久しぶりです。
今回は、冬の季節には合わない、ホラーというかダークファンタジーというか。
英語では逆にぴったりの用語が分かりませんが、日本語ではタイトル通り「妖し」な小説10連発なアンソロジー本です。
なお今回はネタバレなしです。短編ですからね…
だいたい知ってる作家10名が参加
アンソロジー本として、本作「妖し」には10名の方が参加されています。
- 恩田陸
- 米澤穂信
- 村山由佳
- 窪美澄
- 彩瀬まる
- 阿部智里
- 朱川湊人
- 武川佑
- 乾ルカ
- 小池真理子
(掲載順)
文庫本自体のページ数が300ページ程度ですので、だいたい1作30ページ相当です。
全くつながりのない話ですので、どこから読んでも問題ありません。
ホラーともファンタジーとも違う妖し
ホラーというと、一般には恐怖を掻き立てるもの。
ファンタジーはもう少し広いジャンルで、現実世界ではない超常現象や不可思議なこと、設定がある世界ですね。
この「妖し」は「恐怖」だけでもないですし、ダークとも言い難いですし、ファンタジーだけでもありません。
10作の中に様々なエピソードがありますが、収録された作品群をつなぐキーワードが正に「妖し」です。
単純なお化けとは違って、少しの違和感や大きな怪奇現象が付きまといます。
作品もSNSの恐怖もあれば室町時代の話もあり、叙述トリック的な作品もあり。
分かりやすい作品というよりは、後味の悪さを堪能するようなものですね。
アンソロジー作品なのでキリはいい
上にも書いた通り、1作品が30ページくらいなのでささっと空き時間や移動時間に読むことができます。
もともと、私も旅行中の新幹線やバスで読もうと買ったものでした。
ただ、アンソロジー作品(オムニバス作品)ってそもそもあまり好きじゃなかったんですよね。
特にこういった怪異を描いた作品は、消化不良で終わってしまうことが多々あったので。
どちらかというと、すっきりはっきりと他の解釈を挟む余地なく終わった方が好きなのです。
ただ感覚的な話ですが、今作は”ちょうどいい感じ”でした。
謎を明らかに&早く答えを知りたいというのが、ちょうど30ページくらいだとすぐに最後まで読めるからです。
まあ以前ほど個々の作品に執着しなくなったので、「分からないなら分からないでいいや」という心境に変わったこともあるかもしれませんが。
時代小説について
10人もいれば、作風には好き嫌いが分かれると思います。
本書では、武川佑さんが書いた作品が室町時代の「細川相模守清氏討死二ノ事」という作品が収録されています。
時代小説って、読むのに結構パワーがいるんですよね。
時代小説の中でも、(会話はさておき)現代風の文章で書かれたものはいいのですが、やはり古語風に使われるとちょっと読みづらいため。
書き方だけでなく、用語や時代背景もある程度詳しくないと、現代小説並みに楽しむのは難しいですからね。
アンソロジー作品には、時代設定はある程度統一してほしかったなあというのが、ワガママな要望でした。
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