2019年12月5日、京都総評が発表した「30代の普通の生活には月48万円の収入が必要」というのが話題になっていますね。
SNSでの反応を見ると、概ね「そんなに必要ない」「高過ぎ」「そんな貰ってねーよ」といった内容です。
そんな月48万円問題について思うこと。
- 原本を読んでみよう:健康で文化的な生活
- 算定方法を見てみる:健康には栄養が大事
- 試算結果のまとめを見てみる
- 30歳代子ども2人で年収580万円必要
- 個別の項目云々よりも、給料が上がってほしいという目的
- おまけ:GO氏の家計簿
- 家計簿を他人と比べて分析してみたい
原本を読んでみよう:健康で文化的な生活
上にもリンクを貼ってありますが、そもそも原本をあたると目的として以下のように書かれています。
「最低賃金では、健康で文化的な生活はとうてい送れないこと」「最低生計費には全国どこでもそれほど差がないこと」等の根拠(エビデンス)を示している。
(京都総評「最低生計費資産調査結果」より、以下同じ)
つまり、SNSで「そんなにかかってないor貰ってない」は、ここで定める「健康で文化的な生活」からは何らかの要素が外れているということです。
ここで大事なのは憲法25条で言う「健康で文化的な最低限度の生活」ではないことでしょう。
最低限度の生活ならば、もちろんもっと格安な生活になるでしょう。
繰り返しになりますが、そもそも京都総評=労働組合が「今の賃金では安い」という主張の一環として作成したものという点に注意が必要です。
なので、SNSでの意見(この結果じゃ生活費が高い、うちの給料はもっと低い)はある意味正しい反応です。
ただし、労働者側だけがそれを認識してもそこまで意味がないんですよね。
最終的には経営者側が「じゃあうちの給料上げなきゃ」にならないといけないのです。
算定方法を見てみる:健康には栄養が大事
細かい算定方法も、いくつか見てみました。
例えば食費の算定方法。
必要なカロリーや栄養⇒必要な食糧品(g単位)⇒食料品のg単価を乗算という計算方法が用いられているため、(外食費なども考慮していますが)結局のところは体格や食生活によって大きく異なります。
つまり「健康で文化的な生活」が前提となっているため、栄養素はきちんと満たされている想定です。
家具や家電については、耐用年数(例:ウォシュレットなら6年)と価格調査によって月額(ウォシュレットなら、取得費を6年=72か月で均等割)が算出されています。
冷蔵庫・ガステーブル・エアコンも耐用年数6年で算定していて、もう少し長持ちするのでは?
…といった細かいツッコミはありますが、あくまで理論値ですので、それはそれでいいかと思います。
その他の算出事項も、店頭価格調査、アンケート調査、統計調査等々から算出されていました。
試算結果のまとめを見てみる
そういった感じで試算された結果がこちら。
各項目について気になる方は、原本をご覧ください。
思ったよりデータ量が多かったです。
※京都総評「最低生計費資産調査結果」より
この表で一番左の「30歳代の夫婦と子ども2人」の想定は、35歳夫、33歳妻、9歳長女、5歳長男の4人家族。
これで必要とされる合計金額は、月額で486,916円(48万円)。
年額では5,842,956円(580万円)となっています。
注意点を追加しておくと、まず「非消費支出」に社会保険料や税金が含まれています。
ですので、580万円=年収(税込)ということであり、手取りで580万円ということではありません。
30歳代子ども2人で年収580万円必要
この年収580万円がどういう数字なのかを調べてみました。
平均(≠中央値)ではありますが、男性35歳は325万円、女性33歳は243万円ですので、合計すれば568万円。
つまり、二人が平均通りに稼ぐ夫婦であるならば手が届く金額と言えます。
※ただし、京都総評の過程では妻は被扶養者であるため、正社員の共働きを前提にしていません。
※厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」より。
この平均年収には非正規雇用も含まれているため、正規雇用に限ればもう少し平均値が上がります。
そう考えると、必ずしも手が届かない金額ではないように思えます。
逆に京都総評の定義のように、妻がパートタイマー程度だと、夫は平均以上に稼がないとなりません。
ただ正規職員のみの場合、30歳代なら450万円前後が平均・中央年収なので、妻は不要の範囲内ギリギリまで働けば、おおよそ580万円に近づきます。
少し本筋から外れた話。
「お金が無いから結婚しない」という主張がよくありますが、お金が無いからこそ結婚した方が良いと思います。
もちろん「お金が無いとそもそも相手がいない・結婚したがらない」というのも十分あるとは分かってますが。
2人で暮らせば家賃や水道光熱費、食費などが単純に倍になるわけではないので、一人暮らし同士かつ同じ程度の稼ぎならば経済的に合理性があります。
個別の項目云々よりも、給料が上がってほしいという目的
今回の算定結果はあくまで「こういう条件ならこういう結果」というものですので、多くの家庭がそうだ、というものでもありません。
よくメディアで言われる経済波及効果なんてもっと恣意的なものなので、この数字はそれらに比べればきちんとしているように見受けられました。
あくまで前提部分をきちんと読み解くことが大事ですね。
算出根拠にある「京都で生活」という条件だけで、そもそも国民の大半にズレが生じるわけですし。
アナタがよく飲みに行くのか、タバコも吸うのか、子どもが病気がちなのか、医療費は無償なのか等々、個別の差異についてとりあげてもキリがありません。
具体的な数字を挙げてしまうと分かりやすくなる一方で、数字が独り歩きして議論がレベルの低い所で終わってしまうことがあります。
今回の48万円も個々の内訳にこだわるのではなく、京都総評の言う通り「給料が上がって欲しい」という方向でうまく伝わってくれればいいなあと思いました。
おまけ:GO氏の家計簿
さて、私の家計簿です。
月によってばらつきがありますが、私の標準的な月額支出を考えてみると約27万円でした。
内訳については…
- 家賃(ローン・管理費等):110,000円
- 旅費:75,000円
- 食費:35,000円
- 通信費:12,000円
- 水道光熱費:10,000円
- ジム:7,700円
- 書籍・ゲーム(月平均):5,000円
- 被服(月平均):5,000円
- 雑費(車管理等含む):10,000円
まあざっとこんなもんです。雑費はもう少し高いかもしれません。
少し前ですが、年間の支出を振り返った結果はこちら。
家計簿を他人と比べて分析してみたい
この30代独身男性・一人暮らしの私の家計簿が標準的かと言われると、必ずしもそうではないと思います。
例えば、普通の社会人なら計上するであろう「交際費」はほぼ皆無です。
なぜなら酒も基本的に飲まないし、友達もいないからです。
逆に、毎月旅費が75,000円は、個人事業主かというレベルですが、趣味のひとり旅に金をかけすぎているような気もします(今年はもう少し控えたい)。
参考として、同じ30代中盤・同じ一人暮らし・同じ男性の人が、どのような支出構成になっているかは少し気になります。
たぶん旅費は私より少ない人が多いでしょうし、交際費は私より多い人がほとんどでしょう。
スマホやクラウド家計簿ソフトで、匿名性を担保しつつ自分と同属性の世帯(家族構成や年齢、年収など)と家計簿が比較できるというサービスはないんでしょうか?
例えば、30代男性の平均支出はこうなっていて、あなたよりもこの費用が多い、とか。
比較サービスがあったら面白いし、自分の家計を見直すいいきっかけになると思うんですけどね。
比べるまでもなく食費は標準程度だと思いますが、もう少し削る余地もあるかなあ。
家賃はやや高い方かなという気もしていますが、ローンと管理費だから削りようないしなあ。
それにつけても 金の欲しさよ。