「南総里見八犬伝」は教科書にも出てくる物語で、特に千葉県民はご存知かなと思います。
千葉県が舞台の作品としてはそこそこ有名(だと思う)です。
ただ、イマイチ内容を知らなかったんですよね。
同じ千葉県(鴨川市)が舞台となった「輪廻のラグランジェ」がロボットものだというのと同じくらいの知識しかありませんので、今回はお勉強がてら読んでみました。
「南総里見八犬伝 ビギナーズクラシックス」という初心者用です。
ざっくり、こんな話というくらいは語れるようになった…かな。
里見八犬伝の概要
滝沢馬琴(曲亭馬琴)が書いた、江戸時代後半の長期小説。
長期と一言で言いますが、28年間にわたる超長期連載だったということです。
「ONE PIECE」が1997年~、「HUNTER HUNTER」が1998年~なので、その辺りはまだ28年に至りません。
「名探偵コナン」が1994年~なのでもうすぐ追いつきそう、「ジョジョの奇妙な冒険」は1987年なのでちょっと超えてますかね。
また冊数(=巻数)も100冊を超えており、日本の古典最長の名は伊達ではありません。
里見八犬伝の序盤のストーリー
舞台は室町時代、足利政権。
ざっくり言えば、千葉県の南の方(安房の国)で、主君を裏切った山下さん夫婦を、里見さんが追放したところ、首をはねる間際に山下妻「玉梓(たまずさ)」に「お前の子孫は犬にしてやる」と呪われる。
その里見義実(さとみよしざね)の娘「伏姫(ふせひめ)」は口がきけない子だったが、役行者が8つの玉を授けたところ、その後はすくすく育っていった。
しかし今度は里見領内が凶作。安西さんに助けを求めに行ったところ、逆に安西さんはチャンスとばかり、里見の城を奪い取ろうとする。
困った里見さんは、犬の「八房(やつふさ)」に「わんわんわわん(安西の首を打ち取ったら、うちの伏姫をやろう)」と話しました。
すると、約束通り八房は、安西の首をくわえて戻ってきた。
というわけで、犬の八房と伏姫は山中で暮らすことに。
「あたしは何もやってない」と言いながらも、伏姫の腹は大きくなっていた。
そこに里見の忠臣「金腕大輔(かなまりだいすけ)」は、八房を銃で撃ち殺すが、ダブルヒットコンボで伏姫にも弾が命中。
その場は一命を取り留めたが、「犬とはやっとらん」と伏姫は自らの行いを証明するため、腹の中が気になって切腹⇒死亡。
すると、数珠にしていた8つの玉が、腹から出てきた「気」とともに大空に飛び散っていった(たぶんドラゴンボールが願いをかなえた後のイメージ)。
その後、出家した大輔は「・大法師(ちゅだいほうし、ちゅは「´」みたいな文字)」となり8つの玉の行方を追っていく。
八犬士と対応する玉の文字
8つの玉が云々は、本を読む前から知っていましたが、この本だけでは誰がどの玉か結びつけるのに苦労しました。
と思っていたら、最後に登場人物紹介があり、そこにキャラクター名と文字が紐づいて書かれていました。
孝:犬塚信乃(しの)
義:犬川荘助(そうすけ)
忠:犬山道節(どうせつ)
信:犬飼現八(げんぱち)
悌:犬田小文吾(こぶんご)
智:犬坂毛野(けの)
礼:犬村大角(だいかく)
仁:犬江親兵衛 (しんべえ)
この本を読んだだけでは、いまいちキャラクターの個性までは分かりませんでした。
信乃と毛野は、今で言う男の娘のようなキャラクターらしいとか、小文吾はマッチョキャラらしい、道節は火遁の術が使える魔法使い系でサブリーダーっぽい、親兵衛は子どもキャラとかは、何となくわかったのですが。
基本的には、全員正義感で、闘いも強いということくらいしかよく分かりませんね。
大角とか現八のキャラはよく分からんなあ。
ファンタジーな世界観
南総里見八犬伝は、一部は史実に基づくものですが、一部は創作になっているというパターンです。
里見家は実在ですが、犬に殺された武将はいないでしょうし、犬と結婚した姫はいないでしょう。
8つの玉も創作だと思うんですが…
まあ設定がそんな感じなので、時々超人的な部分も出てきます。
特に「道節」は火遁の術を使うそうですし、「ちゅだい法師」は風を巻き起こすことができます。
その他、妖怪や魑魅魍魎の類、呪文、蘇生術なども出てくるようです。
一方で、そこまでの超能力はないのか、移動などは普通に徒歩や馬などのようです。
また、この本で紹介されている限りですが、やたらとはぐれます。
場合によっては、犬士同士がはぐれた結果、数年単位で探していることもあるそうな。
ただ、この時代のファンタジー小説にしては、現代に通じるものがあるなあと感じました。
逆に言えば、現代の作品も南総里見八犬伝に影響を受けているということなのかもしれませんが。
ただ古事記なんかもかなりのファンタジーっぷりですから、昔から意外とファンタジーは日本の文化なのかもしれません。
割とグロい描写もあって、信乃の玉「孝」は、飼い犬を切り裂いた部分から出てくるとか、病気を治すには子どもの血が必要とか、ちょいちょい残酷描写も入ってきます。
本書についての感想
最初の2ページで、ものすごい情報量が詰め込まれていたので、思わずメモしながら読み始めました(後にあまり意味がなかったことを知るのですが)。
本としての評価ですが…訳文の後に原文風の文章が載っているという構成。
そのため、中身は完全に重複しているので、実際の中身は本のページに対して1/3〜1/2程度でした。それが少し残念でしたね。
どうせなら内容に特化して欲しかったです。
後は人物像がもう少し分かるといいかなあと。
ただ「ビギナーズ」ですから、何となく里見八犬伝とはこういうものだと分かったので良かったです。