「四畳半タイムマシンブルース」 森見登美彦 著
アニメ化もされた「四畳半神話大系」に続く作品で、登場人物などもほぼ同じ。
なお、「サマータイムマシン・ブルース」という作品が原作になっており、その内容の舞台をお馴染みの京都・下鴨幽水荘(下宿先)にしたもののようです。
なお、舞台は8月11~12日ということでちょうどこの記事を公開した日ですね。
多少のネタバレを含みますので注意してください。
あらすじ
事の起こりは、ある年の8月12日。
主人公の「私」は京都に住む大学生。
ボロボロの下宿先・下鴨幽水荘に暮らし、下宿内では唯一エアコンがある209号室に住んでいる。
しかし、人を駄目にすることを生きがいにする悪友・小津のおかげでエアコンのリモコンが壊れ、使用不能になってしまった。
後輩であり、映画サークルに所属する明石さんに憧れを持つ「私」は、彼女の撮影する映画作品に惜しみない協力を提供していた。
しかし、なかなか勇気が出ずに、京都の送り火を観に行こうと誘うこともできない。
そんな中、ちょっとした「変化」が彼らに訪れる。
先ほどまで居なかった人物が急に現れたり、不自然にモノが盗まれたり、知っているはずのことを知らなかったり。
そこに、突如としてタイムマシンが現れ、田村という男が未来からやってきた。
タイムマシンという未来の道具を手に入れた彼らは、手始めに「8月11日=昨日」に戻り、壊れる前のエアコンのリモコンを手に入れようとするが…
相変わらずの森見ワールド
表現や文体は四畳半神話大系のままで、好みは分かれると思いますが、私は好きです。
登場人物は四畳半神話大系から引き継いでいますので、そっちは読んでおいた方が(もしくはアニメでもいいですが)いいでしょう。
というか、読んでないと面白さは半減かと思います。
ただ、あまり四畳半(部屋)要素は多くありません。
あくまでタイムワープものです。
とにかく、暗くなることがない作品ですので、明るく楽しい作品を読みたいときには良いと思いました。
普通の作品としてみた場合
まあただ、これを普通の作品としてみた場合、わざわざ(読みづらいから嫌いな)ハードカバーで買うかと言われると微妙です。
「くだらないことに一生懸命になる様」を楽しむ作品ではありますが、何となく有体なタイムワープものですので、あらすじ・ストーリーとしてはまあ普通かなあと感じました。
作品の雰囲気は好きですし、表紙の雰囲気も好きですけどね。
タイムマシンと運命とプッチ神父
タイムマシン・時間の概念としてはドラえもん的な世界観です。
過去を改変すると未来に影響を及ぼしますが、結局のところ未来は変えられないというもの(ドラえもんは、のび太としずかちゃんの部分だけそこと矛盾しますが)。
ドラゴンボールのようにパラレルワールドができるということもありません。
逆に「過去を変えたことすらも、元々決まっていた」という話です。
なので、過去を改変したと思っていることも、過去の改変を防いだと頑張ったことも、全ては元々決まっていたうえで未来が存在しているという話です。
ジョジョの奇妙な冒険第六部のラスボスであるプッチ神父は正にこうした考え方の持ち主で、「運命は最初から全て決まっていて、何かをしたこともしなかったことも、全ては決定されている」という主張でした。
そこで「未来を知ることは不幸を覚悟できることになり、それこそが真の幸福・天国なのだ」というのが彼の主張でしたが、それも一理あるなあと思いました。
不幸も覚悟して受け入れることさえできれば、それは安定して生きることにつながります。
まあ受け入れること自体のハードルはかなりきっついと思いますが。
原作の映画「サマータイム・マシン・ブルース」を観た
映画版の「サマータイム・マシン・ブルース」(「・」の位置がそれぞれ違う?)も冒頭を見てみましたが、思ったよりも原作そのままでした。
最初こそ草野球のシーンから始まりましたが、
・風呂で「ヴィダルサスーン」が盗まれる
・エアコンのリモコンがコーラで壊れる
・未来から「田村」がやってくる
など、細かい点も含めてかなり一致する内容でした。
ただ、上手いこと四畳半神話体系のキャラクターにそれぞれの展開を合わせていて、そこはさすがだなあと思いました。
というわけで、純粋に評価しづらい作品ではありましたが、そこそこお値段通りには楽しめるかなあと思いました。
昨日に戻ったら?
この記事が公開されるのが8月12日。
作品では1日前の8月11日に戻る話が大部分を占めます。
私が昨日(8月11日)に戻ったらですが…
これを書いている今日(8月11日)にやったことと言えば、まあ普通に出社でした。
ダイジェストで言うと…
・誰もいないであろう6時30分に出社したら、「パソコンが壊れた」と半泣きの上司がいたので対応する
・「マクロが壊れたから見てくれ」というやつの申し出を嫌な顔をして受け付けてスルー
・「10分くらい調べたんですが、パス付の添付ファイルが開けないんです」という部下からの申し出に、優しく「これは"j"じゃなくて"i"だね」と教えてあげる
・あまりにうるさいので、本社を離れてサテライトオフィスに逃げる
・サテライトオフィスに新しいパソコンが届いていたので遊ぶ
ああ二度と戻りたくないわ。
というか人生で戻りたい日はないわ。
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