「本と鍵の季節」 米澤穂信 著
前に読んだ「儚い羊たちの祝宴」を装丁買いしたところ、そこそこ面白かったので、同じ作者の作品を買ってみた次第です。
本と鍵の季節の概要
主人公は高校二年生、図書委員の堀川次郎。
閑散とした図書室で、今年知り合った同じく図書委員の松倉詩門と駄弁っていた。
ある日、元図書委員の浦川先輩が二人に「祖父の遺した開かずの金庫を開けて欲しい」というお願いをしてくる。
二人は以前、暗号小説を推理で解決したことがあり、その腕を買われての依頼だった。
単なる遊び感覚という先輩だったが、堀川と松倉は捜査を続けるうちに、徐々に先輩の違和感に気がついていく。
他、5話を収録。
感想
人が死なない推理小説です。いや、一名自殺者があったか‥総じて言えば、重すぎず暗すぎず、時間つぶしにほど良かったです(誉め言葉)。
ちょっとした会話や仕草の違和感から、日常の何気ないシーンを「事件」的なものに昇華して(実際に事件なんですが)、そこから更に紐解いていくというスタイルです。
彼らはあくまで推理をするだけであり、具体的に犯罪事件を解決するだとか、警察に突き出すだとか、そういうことはほとんどしていません。
推理自体は、図書にまつわるものが中心で、知識のない私は感心するばかりでした。
文体は堀川の一人称視点で地の文が書かれていますが、物語は堀川と松倉の会話でほぼ展開していくため、読むのはかなりすらすらと読めます。
300ページ超ありますが、2時間弱くらいのペースでした。
高校生2人ですが、ずいぶん大人びた高校生に感じました。
私が高校生の頃は、もう少し表面的に生きていたというか、日々の事に追われていたように思います、学業とバイトとか。
まあ小説には往々にしてそういうことがありますよね。
名探偵コナンの小学1年生たちに比べればマシだと思います。
ビブリオ
ビブリオというとどちらかというと病原体のイメージでした(細菌のようです)。
たぶん腸炎ビブリオという食中毒の方をどこかで記憶していたからでしょう。
別の意味として、本・図書という意味があることはここ数年で知りました。
本作は、ビブリオものとして区分されることもあるそうで、つまりは本に関する知識などが作品に取り入れられています。
と言っても、細かい知識はなくても読み進められます。たぶん本気のビブリオものは、「〇〇が書いた『XXXX』という書籍の一節に~~」みたいな感じなんですかね、知りませんが。
ビブリオバトルも本でぶん殴りあうものではなく、お互いがお互いの勧める本の書評を展開したうえで、観客が読みたくなった方に票を入れ、多い方が勝ちというもののようです。
でも殴り合ったら何が強いんですかね。ハードカバーが前提ですが、六法全書辺りが一番強いのでしょうか?もしくは上下巻もので二刀流か…
画集なども基本的にでかいので、防御力は高そうですね。
精神的な意味で言えば、聖書や通帳(中身次第)辺りが上位に入ってくるかもしれません。