「ホモ・デウス テクノロジーとサイエンスの未来(下)」 ユヴァル・ノア・ハラリ著
前回からだいぶ時間が経っていますが、今回は「下」を読んだ感想です。
読んだと言っても、再びオーディブルにて聞いた感想です。
※細かく書くには長過ぎたので、ざっくりとした感想の羅列です※
さて「下」です。
下は、第6章「現代の契約」から始まります。
冒頭、人間は「力と引き換えに意味を放棄する」という契約を結ばされているとしています。
人間は永遠には生きられないし、不治の病もあるし、災害で死ぬかもしれない。
人の死ですら神や自然の中で、何か目的があって死を迎える、つまりは何でも意味を持っていると信じていたとしています。
もう少し平たく言えば、昔々は聖書(またはそれに類するもの)が人々の指針となっており、それが全ての物事に意味を与えていたとしています。
一方で、現代はそういった指針はありません。
全ての物事は解決策があって、それは今現在は無理でも、テクノロジーが進歩すれば物理的または技術的に解決できる、と信じられています。
ありとあらゆる出来事は、何らかの物理法則などに基づいていて、意味を持つものではないということです。
その後、人間の思考の拠り所、価値観について述べられています。
「人間至上主義(ヒューマニズム)」、「新自由主義」、「資本主義」…様々な価値観の指標を歴史的背景も踏まえて述べています。
最後に出てくるのは「データ至上主義」です。
果たして、人間に自由意志はあるのか、完全にアルゴリズムなのでしょうか。
データ至上主義の考え方では、あらゆるデータを電子的なコンピュータに解釈を任せて、人間はそれに追従する形で生きていく世界になるとしています。
例えば、これまでは自分の体調や思考は表現しない限り自分だけが知っていて、それに基づいて健康状態を判断していました。
しかし、自分の身体をデータ化すると、ホルモンバランスやらウイルスの進出状況、乳酸の蓄積などあらゆるデータをテクノロジーが把握・解釈し、「あなたは不健康です」もしくは「もうすぐ頭痛が起きます」などと教えてくれます。
そうなると、人間の目標は何になるのでしょうか?
本書では、(データ至上主義では)人間全体がネットワークを構築し、ひとつひとつ(ひとりひとり)はチップであり、ネットワークの高度化が至上命題であるというような結論でした。
人口が増えれば、ネットワークが高速化すれば、モノとも繋がれば(いわゆるIoT的な話)、ネットワークが高度化することができます。
CPUがチップを増やすことで取り扱える情報が増えるように、人もあらゆるものとの結合の中でネットワークの最適化を目指していくようになるとのことです。
昨今の承認欲求ありふれた人を見ると、一理あるとは思えました。
強めの言葉で言えば他人には極めてどうでもいい情報もSNSにあげ、注目を集めたがります。
このブログも承認欲求と言えばそうかもしれないし、微妙な位置付けですが…
自分で自分に意味を見出すのではなく、他人に承認や解釈を求めているということなのでしょう。
テクノロジーがなければそういうこともなかったのですが、それが思考の進化なのかもしれません。
進化というのが、必ずしも良い方向とは思えませんが。
そこまでいくと、私個人の自由意志の話でもありません。
「種の保存」つまり子どもを残すことが生命の本質とよく言われますが、自分の子に何の興味もない私からすれば、そこに同意できません。
しかし「知り合いの子」は可愛らしく思いますし、ちゃんと育ってほしいと思います。
これって、養子を貰う人に近い心理なのかもしれません。
こうなると種の保存よりは人類ネットワーク維持の方が近いのでしょうか?
でもこれは古来から単に母性・父性と呼んでいたものかな。
さて、別の感想です。
本書は上下巻に分かれていて、普通に読んでも相当長いと思います。
これほどの長さが必要な話かというと、そうでもないような…
結局は「テクノロジーが進化すれば」という仮定がかなり曖昧で、「何でもデータ化できます」という抽象的な話になっているので、技術論は全くありません。
どちらかというと「思想・哲学の歴史+データ至上主義」というような歴史書のように感じました。
つまらなくはないですが、前評判の割にハッとするような議論はあまり無かったですかね。
後はオーディブルとしての感想ですが…
「人類は・・・・・していくべきである」「これは世界を一変させる」「これが〇〇主義だ」みたいな話を何時間も聞いていると、説教を受けているような気分になります。
あとはこの手の海外論文系に多い「やたら細かい例え」が口説いですね。
オズの魔法使いのストーリーをつらつら述べたり、リアリティ番組「サバイバー」の構成について述べたりとか…
文字だと読み飛ばして問題ないのですが、音声だと聞かないといけないですからね。
というわけで、何か疲れました。