「十津川警部 わが愛する犬吠の海」 西村京太郎 著
亡くなってしまいましたね。
時刻表トリックの人という認識はずっとありましたが、あまり電車に興味がないせいか、これまで読んだことがありませんでした。
あらすじ
東京のあるホテルで、小池鉄道(てつみち)という人物が殺害される。
現場には、ダイイングメッセージとして自分の血で「こいけてつみち」という自分の名前を残されていた。
捜査にあたる十津川警部は、銚子電鉄の「ネーミングライツ」によって外川駅の名前が「小池鉄道(こいけてつどう)」という愛称が付けられていることを知り、銚子に向かう。
小池てつみちは、大学時代の同級生と京都で広告会社を興し、東証上場を遂げるなど成功者と呼べる人物であったが、なぜ殺害されてしまったのか。
京都~東京~銚子を駆け回り、過去にもさかのぼる推理小説。
独特な文体
まず今回買ったのは新書版。
文庫よりも縦長なせいか、1ページに2段構成となっています。
最初は違和感があったのですが、慣れれば意外と読みやすかったですね。
目の移動が狭いから?
ちょっと読みづらかったのが、読点の使い方です。
西村京太郎氏の特徴なのか、やたらと読点が使われます。
普通に、考えれば、今、刑事さんがおっしゃる通りですが、実は、ちょっと違うのです
どんなことが、入っているのか、知りたくて、業者の人が、他の部屋に入っていった時、そのノートパソコンを、オンにしてみたんです
気にならない人は気にならないでしょうし、何が正解かは分かりませんが、読点が多い文章が苦手なんですよね。
(年配の人のメール文章などに多いイメージ)
すごくつっかえつっかえになるというか…心の中で音読しないようにはしていますが、何だか疲れます。
内容の違和感
ネタバレに少しなりますが、内容でいくつか腑に落ちないというか、気になる部分もありました。
- 小池鉄道は犬吠の海が好きなのに、なぜネーミングライツは犬吠駅ではなく外川駅なのか?ということに、やたらと拘るシーン
- 犯人に罠を仕掛ける際に、民間人に協力を仰ぎますが、「警察が仕掛けたと思われたら困るから」と言いつつ、次のページでは「警察に気が付くわけがない」と言っているシーン
- 小池鉄道の遺書はあったの?
細かいところを気にしてはいけないのか、私が読点疲れで読み落とした部分もあるのかもしれませんけど、違和感が残ったままでした。
感想まとめ
ただ、全体として犯人捜しのサスペンスというよりは人間ドラマを描いた作品のように思います。
そういう意味では最後のオチはまあまあ良かったんじゃないかと思います。
読みづらさもありましたが、180ページくらいなので1時間ちょいで読めるので、サクッと何か読みたいときには良かったです。
ちなみに外川駅はこんな感じで、割と好きです。
本書では、誰も降りないだろ的な扱いでしたが、そこそこ観光客もいるイメージ。
銚子電鉄とネーミングライツ
銚子電鉄について本書の冒頭でも触れられていますが、けっこう事実がきちんと書かれていました。
ぬれ煎餅を売って何とか営業を続けている話、高校生がクラウドファンディングで電車の修理代を集めた話、駅のネーミングライツの話…
具体的に買った企業で出てくる「沖縄ツーリスト」や「根本商店」なども実名です。
銚子海洋研究所のクジラウォッチングは、季節ごとの値段表まで付いていました。
銚子電鉄を通じて、沖縄ツーリストや、根本商店は少し縁があったので、そういう親近感は湧きました。
(現在は、ネーミングライツ企業に入れ替えがありますが)
銚子にもすっかり行っていないので、そろそろ県内旅行的に訪問しようかな。