「聖女の毒杯 その可能性は既に考えた」 井上真偽
「その可能性は既に考えた」の続編です。
前回が斬新な切り口のミステリーでしたので、覚えているうちに読んでみました。
今回はそんなに賛辞していませんのでご了承ください。
あらすじ
聖女伝説が残る田舎の里。
そこは古くからの慣習の残る場所で、婚礼も独特の儀式が営まれていた。
元マフィア(のようなもの)のフーリンは、興味本位で結婚式に参列することになった。
しかし、その結婚式の最中、花婿・花婿の父・花嫁の父が突如倒れる。
死因は砒素中毒。盃に毒を盛られた可能性が高い。
3人は結婚式中に盃を回し飲みしたが、それぞれ間には別の人物が入っており、飛び石で死ぬのはおかしい。
その謎を解き明かすために、または解き明かさせないために、様々な探偵たちが事件に挑んでいく。
聖女伝説は、望まぬ結婚を強いられた「カズミ様」が、婚姻後に一族を全て毒殺するという内容であったー
感想まとめ
今回も比較的同じようなパターンですので、前回の感想記事もご覧ください。
それで今回ですが…
率直に言えば、少し食傷気味でした。
パターンが同じなのは別にいいのですが、ちょっと長かったのかなあ。
キャラクターが、ストーリーのためだけに作られたキャラクターという印象で、リアリティが感じられませんでした。
ストーリー進行上の役割通りのセリフとキャラクターだなあという韻粗油を受けてしまいました。
それ自体はどんな作品だってそうなんでしょうが、余白がないというか、RPGのNPCみたいというか。
利害関係も分かるようで分かりづらいようで…
デスゲーム的な作品(ルールが強制される中での人間模様)みたいなのが好きな人にはいいのかもしれません。
また私の読解力もあると思いますが、一番肝心な様々な証明も「そもそもその前提が確定なのはどうして?」というようなもので、あまり納得感がありません。
そんな感じなので、証明に関する議論が続いているところは、少し目が泳いでしまいました。
そして真実が明かされた最終パート。
トリックはさておき、犯人は最初に私が想像した通りだったので(そういうフラグも多かったですし)、その可能性を既に考えていなかったということは、これまでのお話は何だったのだろうという感じでした。
そんなわけで、今回は前回ほど面白くはなかったかなあという印象です。
それでも新しいことに挑んだ前作、その続編に挑んだというところは、良いことだと思います。
「また最後に何か書いてないか」と探す人がいる可能性を既に考えていたことを、ここに残しておきます。