「満願」 米澤穂信 著
この本、前から多くの本屋で平積みにされていたので、ずっと気になっておりました。
夏休みシーズン(休み増えてないけど)になって読書ブームがきたので、ちょいと買ってみました。
あらすじなど
短編集なのであらすじなども難しいのですが、最初の話の「夜警」について。
交番勤務の柳岡交番長は、新人の川藤巡査と組んでいたが、その川藤が殉職した。
喧嘩の仲裁に居合わせたものの、刃物を持って暴れる男に拳銃を発砲したにもかかわらず、斬りつけられた傷により病院で命を失った。
柳岡は過去、警察に向かない男・三木を追いやって退職させたものの、その後に自殺にまで追いこんでしまったことを後悔していた。
同じように川藤は警察に向かないと判断していたが、指導する気力もなく彼を見ていた。
そんな最中の殉職は、彼を更に複雑な気持ちにしていく。
柳岡交番長は川藤の死を遺族に説明していたが、川藤の兄が「あいつは人を守るためなんて立派な死に方はしない」と言い出す。
兄は、死んだ弟がどれだけ厄介者だったかを並べ立てる。
そして柳岡がたどり着いた結論は…
感想まとめ
こんな感じで、殺人を伴うものがほとんどな、6つの短編で構成されています。
楽に死ねると噂の宿の「死人宿」、アジアのガス開発現場で起きた殺人事件「万灯」、願いを叶えるための殺人を犯した「満願」など。
どれもミステリー要素を持ちつつ、「性根が気持ち悪い」人が多く登場します。
何かを隠すため、何かを得るために、人を殺めたり貶めたり。
周りから見れば、「そんなに大事なものか?」と思うものでも、他人の命と自分の欲望を天秤にかけた結果、どちらが重いかは人それぞれでしょうしね。
殺人という主体的な行為が伴うと、普通は欲望の方を我慢しますけど。
ホラー要素もあり、場所も時代もバラバラの殺人事件が、いい感じのテンポで続くので、さらりと読めました。
豆知識。(犯罪白書より)
殺人事件は年間950件(2019年)、929件(2020年)だそうです。1日に3件くらい。
検挙率はそれぞれ99.5%、98.3%で、他の犯罪よりもかなり高め。
ちなみに窃盗の検挙率は4割くらい。
捜査の本気度が窃盗などとは比べ物にならないからでしょうね。
米澤穂信作品の感想