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【読書感想】「約束された移動」。共感しない話たち。

「約束された移動」 小川洋子

 

本屋さんにて表紙買いです。

 

あらすじなど

この本は全6篇の短編集です。

最初の話が表題作の「約束された移動」なので、こちらについて少し触れます。

ホテルのロイヤルスイートに泊まるハリウッドスターのBと清掃員の主人公。

Bとは直接接点を持たなかったが、ある日主人公は、Bが泊まるたびに本棚から本が抜き取られていくことに気がつく。

他の者は本がなくなったことにすら気がつかないが、主人公だけはその本のタイトルや内容から、Bからの無言のメッセージだと確信する。

何十年と続くBからのメッセージと、その間の彼の役者人生の上り下りを見てきた彼女の不思議な交流を描いたものです。

他「ダイアナとバーバラ」「元迷子係の黒目」など計6作品が収録されています。

 

感想まとめ

この作品では、別に迷惑をかけていたり、ましてや犯罪を犯していることは基本的にないのですが、それぞれの登場人物に独特なこだわりや思考回路があって、そこに共感が全く持てませんでした。

逆に殺人犯やサイコパスが出てくる作品もありますが、それらは意外と人間味があふれる描写が多かったり、こちら側で「元々理解できないもの」と割り切れたりするので、気にならないのかもしれません。

 

表題作の「約束された移動」も、見方を変えると完全に主人公の独りよがりであり、Bからのメッセージと捉えた「1冊ずつ本を取っていく」行為も、単に「1冊ならバレない」という出来心かもしれません。

それを「私だけが気がついたメッセージ」と捉え、自分だけがBを理解している気分に浸っています。

その他の作品も、自分の腕にしがみついて離れない迷惑な老婆を気遣う青年(ここだけ切り取ると余計に意味が分かりませんが)や、ダイアナ妃の衣装を作って纏うことに全力を尽くす老婆など。(結構、老婆率が高いです)

それはそれで面白くないわけではないのですが、「何だったのだろう?」という感じのみで終わってしまって、面白いわけでもなく。

そういう方向に楽しむ作品ではないと思いますが。

 

表現力やちょっとしたミステリーな気分を味わうには良かったですかね。

表題作に限らず「移動」がテーマになっている作品群で、そうした描写もよく描かれています。

そうやってそれぞれの作品に横串を刺してみると、また違った楽しみがあるのかもしれません。

私はそういう体系的に物事を考えるのが苦手なので、ちょっとそこが追い付かなかったかなあ。

 

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