「てんやわんや」 獅子文六 著
てんやわんやって言葉の響きは結構好き。
読んだきっかけ
今回は珍しく、読んだきっかけから。
先日、愛媛県を旅行した際、立ち寄った宇和島で「宇和島本」をもらってきました。
その中で、宇和島ゆかりの芸術家が紹介されていました。
その一人が、獅子文六という作家です。
それによると、宇和島を舞台にした「てんやわんや」という小説があるらしい。
宇和島は行ったものの、それほど周遊もできなかったので、小説で振り返ってみようかなと。
ただ、1949年の著作なので、だいぶ昔のものですけどね。
概要・あらすじ
太平洋戦争が終わって間もない日本。
主人公の犬山は、綜合日本社(出版社)の社長・鬼塚社長に拾われ、編集者として活動していた。
犬山が病気の際には、鬼塚社長の別荘に住まわせるほどにお世話になっていた。
戦後になり、鬼塚社長が戦犯となる可能性があり、付き人のような犬山も危ういのでは?という話になる。
そこで鬼塚社長は犬山に対し、四国の長者である「玉松本家」に避難するよう取り計らう。
遠路はるばる四国・愛媛の田舎にやってきた犬山は、そこで玉松本家の勘左衛門から歓待を受けながら、友人となった大食いの越智、住職の拙雲らとともに、四国の山の中で豊かな生活を送っていく。
時々、東京の鬼塚先生や犬山に好意を寄せる花兵(花輪兵子)ちゃんからの接触など、東京の陰におびえつつも、このままでいいのかという葛藤も抱える。
感想
作者が実際に宇和島市津島町に避難していたので、書かれた作品のようです。
舞台の相生町は架空の舞台のようですが、宇和島の「牛鬼祭り」や南海大地震(1946年)などは実在の話です。
現代でも残っていますね。
さて感想ですが、読んでる最中はそこそこに面白かったんです。
戦争、戦犯などのキーワードや、そもそも戦後数カ月から話が始まるなど穏やかではない時代ですが、舞台となる相生町での生活は、基本的にかなり穏やかで緩い生活になっています。
いろんな作品紹介を見ると「ユーモア」と表現されていますが、そんな感じの緩めの話が続きます。
一方で、最後どうなるのか?と思ったら、多くのフラグを残したまま唐突に終わったという印象です。
犬山の1年間の相生町生活は何だったのか…というところは正直思いました。
読んでいる過程はそこそこ楽しめたので、総合的にはまあ良かったんじゃないですかね。
ローカル小説
最近、実在のローカルな場所の小説というのに興味が湧いてきています。
東京23区くらいだと、あまり感慨も感想もないのですが、例えば旅行で訪れた場所などが舞台の作品。
今回で言えば、宇和島に行ったので興味を持ったわけです。
最近読んでませんが、森見登美彦作品などは京都や尾道など舞台が明確ですよね。
百万遍通り交差点や下鴨神社など行ったときに思い返すことができます。
千葉が舞台の小説と言えば、例えば↓のもの。
これは東京湾の南の方の富津市と鋸南町の間くらい(どっちの市町に属するのか知りませんが)にある実在のお店がモデルになっています。
あとは西村京太郎の十津川警部シリーズでの「わが愛する犬吠の海」。
こちらも銚子電鉄が出てきて、実在の企業も出てきます(ただ事実と仮が混在しているので、実際を知らないと判断できないかも)。
今後も特定の場所が舞台の小説を読んでみたいですね。
訪問が先か、読んだ後に訪問かで迷いますが、先に訪問してから小説を読んだ方が楽しい気がしています。
何かローカル小説でオススメがあれば教えてけろ。