『ロボット・イン・ザ・ガーデン』 デボラ・インストール著 松原葉子訳
久しぶりの海外小説。
ロボットがやってきた話。
以下、ネタバレを含みます。
あらすじ
舞台は近未来、人々の生活にアンドロイドが入り込んでいる。
獣医になる夢をあきらめ、専業主夫として悶々と過ごすベン。
妻のエイミーはいわゆるキャリア・ウーマンで、
彼はそこに負い目を感じつつも反抗心も抱いていた。
ある日、庭にボロボロのロボットがいるのを発見したベン。
ロボットに名前を聞いてみると、タングと名乗った。
タングは名前を話すのがやっとで、わがままで生活の役には立たない。
しかし、そんなタングを家庭に招き入れた彼を見て、
妻のエイミーは愛想を尽かして出ていってしまう。
一方、タングの体内のシリンダーから
どんどん液体が減少していくのに気づいたベンは、
彼を直せる技術者を求め、世界中をめぐる旅に出ることにした。
感想:海外版ドラえもん?
ロボットのタング=子どもの象徴と言えるような気がします。
タングが来る前のベンは、何についても無気力でしたが、
手のかかるタングと生活を共にし、
タングと世界を回るうちに成長していきます。
そういう意味では、タングもベンも子どもだったのかもしれません。
修理者を探して世界をめぐりますが、
作品全体は長いものの、登場人物達はみんなあっさりしています。
タングの生みの親にようやく会った、といっても、
その人物像が深く掘り下げられることなくお別れ。
締めくくりについても、少しあっさりし過ぎた感じがあります。
タングが可愛さに媚びている感じもあり、
やや合わなかった部分もあったなあという印象。
ベンがいろいろな事に気づいて成長していく描写はいいんですけどね。
子育てで親は育つのか?
子ども達から貰うものにはいろんな意味がある
それを知らずに生きてるうちはまだ子どもなんだね
…という私の好きな吉井和哉の歌もありますが、
子育てをすることで親も成長するのでしょうか。
もちろん、子どもを育てるのは大変なことであり、
そこから学ぶことは多くあることは理解しています。
私は独身ですが、兄弟の子とは週1程度で会っているので、
日々の成長(とまではいかずとも)を感じて、
何かしら思うこともありますし、育て上げる苦労は成長の糧になるでしょう。
一方で、社会に出てみると、
こんな人でも子どもがいるんだよな…?という人もいますよね。
まあ結局は本人次第なんでしょうけど、
子どもがいるから、もしくは結婚しているからといって安心できませんね。
海外小説特有の表現
文章で伝えづらいのですが、
海外小説特有の演出――例えば、それはこんな挿入文が入ること―― が、
あまり好きではありません。
読むのにリズムが狂って、少し疲れてしまいます。
例えば、こんな風に、句読点が、多い文章って、読んでいて、疲れますよね。
ほかにもすべてひらがなでかかれると、りかいするのもたいへんですしよみづらい。
というわけで、どうでもいい話ですが、上記の様に
――わざと読みづらくしているものと「同じ」にしていいのか分からないが――
海外小説的な演出もなかなか慣れません。
こちらはあまり気になりませんでした。
作者が日本文化に馴染みがあったせいか、
訳者の方が日本向けにしたせいか、
どちらも別に関係ねーよ、なのか。
ただ、海外小説も面白いものは当然多いので、
徐々に――それは本当に少しずつでも――慣れていこうと思います。