「元彼の遺言状」 新川帆立
あらすじ・概要
「僕の全財産は、僕を殺した犯人に譲る」という遺言を残し、大金持ちの森川栄治は若くして死んでいった。
死因はインフルエンザとされるが、「自分が殺した」という人物は後を絶たない。
主人公の弁護士・剣持麗子は、森川栄治と学生時代に交際をしていた。
たまたま栄治の死とその遺言を知った麗子。
学生時代の共通の友人・篠田から、「自分がインフルエンザを移したことにして、殺したことにならないか?」という相談を受ける。
栄治の遺産が60億円にも及ぶことを知った麗子は、篠田を殺人犯に仕立て上げる依頼を受けることにした。
感想
展開はそこそこ面白かったんじゃないかなという前提で…
途中まではタイトル及びその中身(遺言状)の異質さなどで、どうなるんだろうかという感じでしたが、最後は少し失速したかなという印象です。
一応、遺言状で一本筋は通っているようで、途中でふらふらし出したような。
あくまで私の印象論ですけどね。
イマイチ感が残ったのは、主人公の剣持麗子も金に執着が強く向上心バリバリで、ほぼ全方位に周りを見下すタイプという私からするとあまり共感できる感じではなかったからかもしれません。
冒頭、婚約指輪を渡してきた交際相手に「私はそんなに安くない。内臓でも売って金作れ」と本気で言うくらいなので、まあ共感はしない方がいいでしょう。
キャラ付けは大事ですが、冒頭のこのシーンだけでもちょっと引いていたのかもしれません。
本書の続編である「倒産続きの彼女」の方が、主人公が大人しめで近いものを感じたかなあと思いました。
疑問
作中で、「インフルエンザと知っていて、かつ相手に感染させようとして会いに行き、最終的に感染させて死んだら殺人」というようなことが書かれていたんですが、それは本当なんでしょうか?
法律上の感染症指定とかあるのか分かりませんが、そうするとインフルエンザにかかって動き回ってうつった場合、死ななければ傷害罪?
同じく作中でも突っ込みがありましたが、殺人を肯定する・促すような遺言は、即無効なんじゃないかなと思います。
それをみんな結構律儀に守ろうとしているんですよね。その動機付けがあまりしっくりきませんでした。
我が一族も、相続争いで裁判沙汰になりましたが、お金は人を変えますね。
また一人亡くなりそうだから、揉めなければいいけど。
(金額は、本書と比べれば微々たるものですが)