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【読書感想】「わたし、定時で帰ります」私も帰りたい。ドラマありきっぽい原作。

「わたし、定時で帰ります」 朱野帰子 著

 

 

 

働き方改革法案が施行されましたね。

本来ならば、元々労基法をしっかりと守り、それ以前に従業員の事を考えている会社であれば、特に戦々恐々とすることはありません。

が、罰則規定がついたことにより、当社の経営陣もビクビクしています。

 

そんなわけで昨今注目されている「働き方」をテーマにした小説です。

ネタバレもありますが、バレてどうこう言う作品でもないように思いました。

 

ドラマの方は、2019年4月16日から放送(主演:吉高由里子)だそうです。

テレビがないし興味もありませんが、ドラマ映えしそうな(良くも悪くも)感じですので、どうせならドラマで観た方がいいかもしれません。

 

 

あらすじ

主人公の東山結衣(32歳)は、IT企業に勤務し、必ず定時で帰ることを信条としている。そんな彼女の振る舞いは、周囲からは非難されることもあったが、彼女は意に介さなかった。

 

以前、ブラックな中小企業の社長を務めていた福永が上司としてチームに入ってきた。

その会社は、結衣の元婚約者である種田晃太朗が以前勤めていた会社だ。

種田は現在、結衣と同じ会社で働いているが、そこでも「社畜」のように長時間かつ高効率で働く、マシーンのようなエース的存在だった。

 

福永の会社は、下請けや社員を使いつぶした上、種田に転職されたため、ほどなく行き詰ってしまい、結衣と種田の会社に、一部署の統括者として流れ着いたのだった。

着任早々、納期・コストも非常に厳しい案件を福永が獲得してきて、そのプロジェクトのチーフに結衣が選ばれる。追加の要件も増加し、現場はひっ迫し続ける。

絶対休まない同僚、会社に泊まりこむ部下、すぐ辞めたがる新人などの「内乱」を抱え込みながら、結衣は炎上必至のプロジェクトに取り掛かっていく。

 

ドラマ化ありきっぽい

登場人物は、絵にかいたような(字に書いたような?)典型的なキャラクターが多め。

「こういう主張をしたい」から「こういう対立キャラを置こう」といった印象で、何と言うか昔で言えば越後屋と悪代官。

もう「悪」って付いちゃってるじゃんというくらい、分かりやすいので、勧善懲悪ものドラマにしやすそうですね。

まあ少しは会社員としての微妙な立ち位置なども描かれていますが。

良く言えば、キャラがほとんどぶれずシンプルなので、全編を通して読みやすいし分かりやすいです。

 

両極端はいずれもよくない

この小説を読んで思ったのが、みんなが極端なので賛同できる登場人物がいないということでした。主人公も然り。

 

まず、私自身も残業は嫌いです。

帰れるならばさっさと帰りますし、そもそも会社が好きでもないし。

周りがだらだら残業していることも多いので、そんなのは無視して先に帰ります。

ただ、トラブルや重い仕事を抱えている人がいて手伝えそうなら手伝うこともしています。

一人が3時間残業する仕事に対して、私が加わることで二人で1.5時間ずつで終わるようなら、(気分にもよりますが)基本的には手伝います。

 

「私、絶対に残業しません」は、正直なところ、会社員としてはイマイチ使いづらいでしょうね。

若手ならまだしも、ある程度の層になってきたら多少は覚悟しないと難しいでしょう。

そういう人は「評価も気にしないし、出世もしたくない」と続くことがほとんどですが、そういう問題じゃなく。

 

それは長時間働かないと評価しないとかそういう意味ではなく、どんなことでもイレギュラーはあるということです。

具体的に言えば、例えば使用しているパソコンがぶっ壊れてデータが飛んだとか、顧客からのクレームの電話が延々と続いたとか。

その他無数の理由で、定時に仕事が終わらないなんてことはいくらでもあり得ます。

 

あるいは、もっと役職が上がってくれば、「多少残業すれば仕事が取れて、利益が出る」というケースもあり得ます。

例えば1日1時間の残業によって納期が間に合い、結果として相応な利益が上がるという案件もあります。

それに対応できる・できないは、経営側の立場からすれば大きな違い。

 

どうも「残業あり=ブラック」という論調の人がたまーにいますけど、程度の問題ですよね。

多くの企業で36協定など結ばれている(結ばされている)以上は、多少は対応して然るべきかなと思います。

職種・繁閑の時期にもよりますし、更に個人の許容度はそれぞれですが、私は週に数~10時間程度の残業なら別にいいかと考えます。

部下には強制はしないように気をつけてはいますが。

 

もちろん、仕事のために何十時間も残業したり(させたり)、更には過労死寸前なんてのは問題外です。

加えて、個別の事情がある場合はもちろん別ですけどね。育児・介護・病気等々。

 

この話の主人公の東山結衣も、過去のトラウマはあったにせよ、一人暮らしで早く帰ってハッピーアワーのビールを飲むしかしていません。

プライベートとなればもちろん自由ですが、人間というのは感情の生き物。

さして優秀という描写もなく、かつチーフでもある主人公がさっさと帰って、その分を他の社員が埋め合わせさせられていると感じ、非難されるのも無理はないでしょう。

ただ、この小説の主人公の敵キャラは、「叩きやすいキャラ」しかいないため、そこのところ(「普通」の社員からの感情的側面)は割とスルーされています。

 

資生堂ショックに答えはあるのか?

最近、うちの職場では育休が相次いでいるため、すぐに担当者が入れ替わります。そのたびにその部署の中間管理職A氏が「また新人が来て、育ったと思ったらいなくなり、またゼロから教育」とかなりの負担を強いられています。

また、仮に復帰しても時短勤務になっているので、「半端にいるからフルの人員も補充できないのに、これまでの1人分の仕事はしてくれない!」とA氏が文句を叫んでいる状況になっています。

 

現代では育休に対して何かを言うのはもはやタブー視されていますが、現実の問題としてA氏の残業時間がうなぎ上りで、ストレスとヘイトも溜まっています。

人員に余裕があり、全員定時でできる仕事量で利益を出すのが経営者の役目と言われるかもしれませんが、果たしてそこまで有能な経営者またはビジネスモデルがどこまであるか…

なので私も最近は手伝える範囲で手伝っていますが、部外者としてできる限界はありますし、あまり手を出していると私の上司から何を言われるか分かったもんじゃありません。

 

女性同士に限りませんが、「資生堂ショック」については、明確な答えはありませんし、回答もケースバイケースでしょうしね。

 

gendai.ismedia.jp

 

要するに、職場に余裕があれば問題ないケースがほとんどなんでしょうが、常に人にも業務量にも、そして経営にも余裕のある会社は少ないでしょう。

ただでさえ、日本の企業の多くが人手不足にあえいでいる時代です。

それでも、いかに余裕を持って仕事できるかが、そのまま職場の心地よさにも直結するのでしょうね。

 

たぶん、今の50歳前後の世代はほとんど変わらない

今の50歳前後のバブルを経験したような世代は、仕事が大好きで、根性論で何とかなると思っているような人が多いですね。

個人の信条ならばそれは構いません。

問題は、いまだにそういう人たちが若手を評価し、経営をする側にいてそれを強いる、もしくはその姿勢がにじみ出ているということです。

 

私は基本的に上にも言いたいことは言いますので、

「このご時世に当社の50~60代の社員は、非効率と長時間労働を美徳とでも思っているかのような人が多すぎる」と常々社長にも進言しているのですが、社長からは「あの世代は無理。諦めなさい」というありがたい指示が。

 

「人生100年時代」が流行りのキーワードです。

100年生きる間、一つの仕事や会社だけでは食っていけないのだから、より広い視点でキャリア、ひいては人生を見つめなおしましょうということです。

しかし、そもそもあれは「2007年に生まれてくる子供の半分が100歳まで生き残る」が書籍(LIFESHIFT)の中で100年時代なんですよね。

つまり、50歳以上の人はそもそも100年時代の対象外であり、そこは割り切った方が楽です。

 

 

「わたし、定時で帰ります」でも「組織を変えるには偉くなるしかない」という話がありますが、まさにその通り。

ただ問題は若手が偉くなるまでには、評価を得なくてはならず、その評価をする人たちは…ということ。

そうやって負のループが続いていますが、近年は少し潮目も変わったように思います。

これが時代が流れるということなのでしょうかね。

少しずつですが、「働きやすい職場」が増えるのは期待できることでしょう。

 

感想まとめ

話を残業の有無に戻しますが、結局はバランスの問題で、過度な強制・常態化や未払いなどの法的問題も無い中では、多少残業が発生するのは仕方ないかなあと思います。

残業をしないように仕事をするのは大事。

残業させないように仕事をさせるのは管理職・経営側の務め。

それでも発生してしまう場合は、できる限り不満や不幸のないようにするのも必須。

難しいけど、できることをやるしかないんですよね。

 

ああ、本を読んだ感想のまとめでした。

内容としてはキャラと話題優先でそんなに深ーい印象はありませんが、トレンド的な内容としてさらっと読むには可もなく不可もなくって感じですかね。

結衣が務める会社は「ホワイト化」を目指している企業であるのにあまり描写がなかったので、そこがあればより対立軸や理想と現実の間などが描かれたのではないかと率直に感じました。

 

 

著者の「帰子(かえるこ)」というのは、この本のタイトルに合わせてきたのかと思いましたが、別に関係ないみたいですね。

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