先日も書いたアートに関する記事。
その後、たまたまアーティスト兼大学で美術を教える教授の方と話す機会がありました。
「せんせー、アートってなあに?」と聞いてみました。
今回はそんな話です。
東北の事例
そこで聞いたのが東北のある町のお話です。
(多少うろ覚えなのでアレンジしていますが、主旨は変えてません)
ある商店街の一角にアーティストが移り住みました。
彼は商店街の活性化という命題を与えられました。
地方の商店街は消滅しているところがほとんどで、やる気のない店も多々あります。
それでもそのアーティストはこんなことを考えました。
「買い物は住民みんなが必ずするが、商店街に馴染みがない。そもそも、商店同士はどうなんだ?」と。
そこで始めたのが、各商店主を周り「街の噂」を集めることにしました。
テーマは何でもOK。
「あそこの店主は今じゃお爺さんだけど、昔はロックバンドをやっていた」
「あの店の夫婦はあそこの神社のお祭りで出会って結婚した」などなど。
周りからみれば、本当にどうでもいいことをたくさん集めました。
そしてそれを各店舗の店頭に張り出しました。
すると、それを見た街の人が、「あのご主人、ロックやってたんだ」といった情報に意外性や親近感を覚え、話しかけたり来店したりするきっかけとなって、賑わいが生まれたそうです。
(もちろん、劇的に活性化した!という程ではなかったと思いますが)
それが好評となって、噂の数も増え、また一時的の予定が今でも張り続けているお店もあるとか。
それもアートなの?
つまり、やったことは商店街の噂を集めて文字にして、カードを店頭に張り出しただけです。
これを実行したのが、たまたまアーティストだっただけで、果たしてこれがアートなんでしょうか?
私も先生に尋ねました。「子、それもすなわちアートとなりえるか」と。
アートとは。
その回答として言われたことは、「アートとは、目に見えないモノを見えるようにすることであるからね」とのことでした。
なるほど、としっくりきました。
「街の噂」というのは確かに存在しているのですが、目に見えているわけではありません。
それを具現化しただけと言えばそれだけですが、具現化したことによって人々の受け止め方や他人への発信力が格段に変わり、行動変化まで促しました。
写実的な絵画では逆にイメージが湧きにくいですが、抽象画などは目に見えない心象風景や想像の世界を具現化したものと言えます。
ちなみに、先生からは「全てのアートがそうとは言えないが、アートの一つは目に見えないものの具現化にある」とのことでした。
キュビズムについて
ピカソの画風で有名なキュビズムについて説明を受けたことがあります。
本来、絵とは二次元ですので、対象の正面なら正面、側面なら側面しか分かりません。
しかし、正面にも良いところがあって、側面にも良いところがある場合。
それを同時に書くことは、従来の画法(写実など)では不可能でした。
キュビズムはそこの概念を壊し、目に見えている面にこだわらずにその対象の本質や魅力を描くという技法です。
※私なりの解釈ですので、少し間違っているかもしれません。
これも目に見えているモノをそのまま描くのではなく、イメージや美点などを脳内で一度全て要素に分解し、さらにそれを絵として二次元に落とし込みつつ昇華させる技法と言えるでしょう。
そういうことならば、見えないものを具現化することと同義なのかもしれません。
アートについて
今度、誰かに「アートってなあに」と聞かれたら、「ああ、目に見えないものを表現して具現化することさ」とすかして答えてみようと思います。
みんなも使っていいよ。