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読書感想/あのひとは蜘蛛を潰せない

「あのひとは蜘蛛を潰せない」 彩瀬まる

 

第158回直木賞芥川賞候補が発表されましたね。

sekai no owari藤崎彩織さんの「ふたご」が

エントリーされたこともニュースにもなりました。

(あまり知らなかったですが)

www.bunshun.co.jp

 

ちなみに、ざっくりと違いを述べておくと、

芥川賞:純文学の新人~中堅作家

直木賞:大衆文学の新人~中堅作家 とのことです。

 

所謂「文学」というものを読まないので、純文学はちと読みづらい。

そのため、直木賞候補作家から何か読もうと調べた結果、

年齢も近い「彩瀬まる」さんを読んでみようと手に取りました。

私は丸いものが好きなので、名前も気になりましたし。

 

以下、ネタバレを含みます。

そして、いつも以上にまとまらない感想文です。

 

 

あらすじ

28歳の野坂梨枝は、母親と二人暮らし。

地元のドラッグストアの店長として、日々仕事と自宅を往復する生活。

同居する母親は世話焼きで、28歳になった今も

梨枝は母に依存しながら過ごしていた。

 

一方、梨枝側も母親に必要とされているという自覚があった。

母親は、梨枝がまだ小さいころ、子どもを一人亡くし、

それが発端となって父と離婚。

6歳上の兄は結婚して既に家を出ているため、

「かわいそうな母」には自分しかいないと思い込み、

母親の過干渉を疎ましく思いながらも同居を続けていた。

 

そんな中、梨枝に転機が二つ訪れる。

一つ目は、三葉という大学生バイトとの出会い。

最初は一方的に惚れられる形で、梨枝と交際が始まった。

二つ目は、兄家族が実家に戻るため、1人暮らしを開始。

兄の嫁は、幼馴染で年上の雪ちゃんである。

その雪ちゃんが妊娠したことと、兄の転勤が重なり、

実家に戻ってくることとなった。

 

この2つの変化を期に、梨枝は少しずつ変わっていく。

 

登場人物の心理

本書は梨枝の一人称視点で語られるため、梨枝の心理はよく描写されます。

一方で、三葉や母親、兄、雪ちゃんの心理は、最初は見えてきません。

しかし徐々に、みな深い部分で分かりあえていないことが見えてきます。

それは梨枝と三葉、梨枝と母親、兄夫婦でも。

まあ人間てそんなものだとは思いますが、理解しようとする姿勢は大事ですよね。

 

世間体とは

私には文学的表現ができないのですが、

平たく言えば「世間体」が本書のテーマと感じました。

梨枝は母親から「それはみっともない、恥ずかしい」と事あるごとに言われて育ちました。

それゆえ、いつも外からの評価に怯えて、他人を拒絶することはおろか、

拒絶しようとする自分すらも受け入れられないという思考に陥っていました。

 

また、人に拒絶される・嫌われることも徹底して避けていました。

要するに臆病なんでしょうね。

「大人」の定義は難しいですが、世間一般に言えば「大人になりきれていない28歳」という印象を持たれてしまうでしょう。

 

関係を続けたいなら対等であるべき

先日、「カンブリア宮殿」を見ていた時に、

セカンドハーベストというフードバンク(ざっくり言うと期限間近の食品を集め、有効に再配布する仕組み)を運営するボランティア団体の代表の方が、

「食べ物を『あげる』という姿勢では駄目で、ここに余った食べ物があるから良かったらどうぞという姿勢が必要。対等な関係でなければ長期的に継続できない。」的な話をしており、なるほどなあと思いました。

 

梨枝は母親を「かわいそう」という目で見ていましたし、

母親は娘が大人になってからも「自分がいないと駄目」と思っていました。

これでは最近よく言われるマウンティング的な関係になってしまい、

お互いに疲弊し続けてしまうことでしょう。

 

嫌われる勇気

「嫌われる勇気」という本が流行ってますね。

私は読んだことありませんが、

タイトルそのままの意味だとすると、これを持つのは難しい気がします。

私はひとり暮らしが長くなってきたせいか、

「生活に支障がないなら人に嫌われてもいいや」と思いつつありますが、

それでも人に迷惑をかけたり不快にさせたりしないよう最低限は努力します。

 

一方で、それが例えば上司であったり、先輩であったりしても、

「こいつに好かれる必要があるのか?」という人も正直います。

肉親だからといって必ずしも好きになる・好かれる必要はないですし、

「家族だから」といった理由で我慢し続けるのももったいないですね。

 

小さいことからでも

梨枝が変化したのは、大きくは交際と独立という環境変化によるものでした。

やはり一度慣れた環境から離れてみるのは良いことかと思います。

今の自分が嫌だと思うなら、半ば強制的でも、

あるいは少しでも、環境を変えてみるのも一つですね。

それが良い方向に変化するかは分かりませんが…

 

 

面白く読みやすい本でしたが、

何となくいつも以上にまとめにくい内容の本でした。

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