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【読書感想】ぼぎわんが、来る (映画「来る」2018年12月~原作)※後半ネタバレ

「ぼぎわんが、来る」澤村伊智 著

 

ぼぎわんが来るらしいですよ。ぼぎわんです、ぼぎわん。

ぼぎわん、初めて聞きましたけど変わった響きですよね。

 

「第22回日本ホラー小説大賞」にて、綾辻行人、宮部みゆき、貴志祐介の著名なお三方が絶賛だったそうです。

2018年12月には岡田准一主演で映画化も予定されており、文庫化も含め話題になるかもしれませんね。

映画版のタイトルは、シンプルに「来る」だそうです。

 

【「来る」公式サイト】

kuru-movie.jp

 

以下、あらすじ辺りまではOKですが、後半にはネタバレもあります。

良いホラー作品で、大変おすすめです。

 

 

 

あらすじ

会社員の田原秀樹は、幼少の頃に不可解な思い出があった。

重い認知症だった祖父・銀二と2人で留守番をしていると、謎の灰色の人影が訪問してきた。

謎の人影は、玄関のガラス戸から、秀樹の祖母シヅや祖父銀二、死んだ伯父の在宅を尋ねてきた。

「ギンジさん、ちがつり」などと謎の言葉を繰り返す訪問者。

 

すると、認知症のはずの銀二が突然「帰れ!」と叫ぶ。

「あれは開けたらあかん…ほんまは答えてもあかんねや」と銀二ははっきりと語る。

その一瞬だけ、銀二の意識ははっきりしていたが、すぐにいつもの認知症状態へ戻ってしまった。

ほどなくして、銀二は亡くなった。

 

銀二の通夜の席で、祖母シヅはよくある地元の妖怪話を語った。

話ながら、祖母シヅは急に思い出した。

以前祖父が、もっと恐ろしい「ぼぎわん」について語っていたと。

果たして秀樹が玄関越しに見たのは、ぼぎわんだったのか?

 

時は流れ、大人になった秀樹は、仕事で知り合った香奈と結婚。

香奈も妊娠をし、夫婦円満で平穏な家庭だった。

秀樹は、子育てパパ達とも積極的に交流し、子育てブログなども開設し、一生けん命に育児と仕事の両立を目指していた。

 

しかし、まだ誰にも教えていないはずの子供の名前である、「田原知紗の件で」と、

秀樹の会社に不審な人物が訪れた。

同僚からそのことを聞いた秀樹だったが、受付に降りて行ってもそこには誰もいない。

どういうことかと同僚を問いただすと、突然、同僚の右腕から出血。

病院では「何かに咬まれた」との診断が下される。

 

その後も、秀樹の周囲に不可解な出来事が起こっていく。

ぼぎわんの仕業と確信した秀樹は、霊能力者・比嘉真琴に助けを求める。

 

3人の主人公たちの視点が交差する

いつもよりあらすじが長くなってしまいました。

本書は3章構成で、

第1章:田原秀樹

第2章:田原香奈

第3章:野崎和浩

と、別々の主人公の視点で描かれています。

 

時系列も一部重複しているので、

秀樹から見るとこうだったのが、香奈から見るとこうといった感じで、

うまく同じ事象でも視点を変えて面白さを出していました。 

 

王道だけど、それがいい

よくよく振り返るとストーリーは王道で、話自体はそんなに奇をてらっていません。

謎の妖怪か祟りである「ぼぎわん」と、霊能力者に頼る一般人の戦い。

それでも面白いと感じたのは、表現の技術でしょうか。

王道ってのは、面白いから王道ですしね。

 

ぼぎわん、ちがつり、さむあん

「ぼぎわん」など、こういった用語(?)の使い方も上手いなあと思いました。

「意味は分からないけど何となく不気味」な感じが出ていますよね。

前にネットの2chまとめでみた「巨頭オ」に通じる不気味さ。

4文字くらいの意味不明な言葉って、一番くるような気がします。

 

※以下、ネタバレあり

 

ホラー作品の種別について(お化けとヤクザ)

ホラー作品には、2つ種類があります。

一つは現実的な恐怖。

冒頭に名前を出した貴志祐介氏だと「黒い家」が有名ですね。

あれは頭のおかしい女性が出てきますが、あくまで人間の範疇です。 

 

もう一つは、本書のような超常現象の恐怖。

妖怪、呪い、祟り…もはや古い作品ですが「リング」等が該当しますね。

 

バトル漫画でよくある「どのキャラが強いんだ?」的な話でもありますよね。

現実的なボクシング漫画である「はじめの一歩」と、

ファンタジーである「ドラゴンボール」では全く強さが異質です。

(現実的な戦闘漫画があまり思いつきませんでした)

 

現実的恐怖と超常現象的恐怖のミックス

「ぼぎわんが、来る」は、その両方が含まれると思います。

第一部の秀樹視点では、超常現象から妻と子を守るイクメンの姿が描かれています。

しかし、第二部の香奈視点では、秀樹の父親像が崩壊します。

(第一部でも、フラグは立ってましたが)

ある面からみれば輝いて見えるものも、反対側はドス黒い感情が渦巻いていたという描写です。

 

結局は、「ぼぎわん」の正体は、人の業によるものでした。

古くは、口減らしのために、山に捨てられた子ども達の遺恨で生まれたぼぎわん。

そして、銀二による子殺しに至るほどの虐待から耐え忍んだシヅの遺恨が、ぼぎわんを呼び寄せた。

超常現象を呼び寄せたのが、人間の極めて残酷な側面、あるいはすれ違いから生じる負の感情対立だったという意味で、本作は二つの恐怖が描かれた作品だなと思いました。

 

怖い夢を見たの

本書の冒頭だけ読んで、そのまま寝落ちするような感じで入眠したら、

「全く覚えていないけど怖い夢を見た」感覚で目が覚めました。

よく夢の中で死んだり殺されたりはする私ですが、

超常現象的な怖い夢を見ることは久しぶりでした。

 

そもそも超常現象的なものにあまり恐怖を感じたことがないので、普段恐怖を感じることがありません。

しかし、夢の中では「恐怖そのもの」がぶつけられたようで、問答無用で怖かったです。

まあ30歳過ぎて「怖い夢をみたの」というのもどうかと思うけど。

 

オカルトとは

話が変わりますが、占星術師の鏡リュウジ氏をご存知でしょうか?

ご本人には失礼ですが、私はまったく知りませんでした。

が、会社の上司が大ファンで、以前2回ほど講演に連れていかれました。 

占いはやや胡散臭く感じる私ですが、講演内容は西洋哲学史的な話で、意外とためになりました。

 

その中で氏が語っていたのは、

「そもそもオカルトとは未知なるものという意味で、昔はオカルトを学ぶということは研究そのものを意味していた」というような話が印象的でした(うろ覚え)。

今でこそ、オカルト研究=あやしいというイメージを持ちがちですが、

昔は未知なるものの探求だったようです。

 

私も現実では科学が万能(今は足りなくてもいつかは)だと思っていますが、

せめて創作の中では、純粋に超常現象も楽しみたいですね。

 

というわけで(?)、本書は非常にお勧めできるホラーでした。

 

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