「ファントム・ピークス」 北林一光 著
「ファン・ピー」を知っていますか?
知らない!
自粛中の本屋さん支援の一環として、「ちょっとでも気になった本は買う」キャンペーンを実施していたので、裏表紙も見ずに買ってみました。
宮部みゆきさんが絶賛しているようですが、彼女の作品って数が多過ぎていまだに1冊しか読んだことがありません。
ちなみに本当の表紙はこんな感じ。
あらすじの後、ネタバレを含みます。
「ファントム・ピークス」のあらすじ
舞台は長野県の山中にある、小さな自治体の堀金村。
東京から移住してきた三井周平・杳子(ようこ)夫婦は、遅めの結婚生活を2人で満喫していた。
ある秋の日、杳子は湧き水の取得と山菜採取がてら、歩き慣れた山の中を散策していた。
しかし何かがおかしい。
周囲の異変に気付いた杳子は、気づいた瞬間には既に遅く、帰らぬ人となった。
春になり、たまたま山に入った釣り人が、沢で頭蓋骨を発見。
それは三井杳子のものと断定された。
慣れた山中で謎の死を遂げた妻の死因を探り続ける周平。
その頃、同じく山中に入った女性が相次いで行方不明になった。
小さな村は神隠しの山として不名誉に有名になる中、山に潜む「何か」を探るため、周平たちは山中を駆け巡る。
そうこうしている間にも、徐々に犠牲は増えていく…
そんな人と「何か」の1か月に及ぶ闘いを描いた作品。
以下、ネタバレあり注意。
「ファントム・ピークス」の正体
途中まで、ファンタジーなのか、現実的な話なのか掴みかねていました。
ファンタジーだったら、杳子らが襲われたのは天狗の仕業かもしれませんし、妖怪の類だったかもしれません。
が、今作は極めて現実的なお話です。
そして割と中盤くらいにあっさりと「熊」であることが明かされます。
こういうのって「と、みせかけて!?」という展開かと思ったのですが、素直にそのまま熊(ヒグマでしたが)として話が進んでいきました。
「ファントム・ピークス」の感想
動物園などでツキノワグマを見ると結構小さいですしオッサンみたいだなと思う程度ですが、ヒグマはやはり巨体ですし明らかに強そうです。
今作でもヒグマが無双状態になっている部分もありますが、実際に小銃程度では勝てる生き物ではないんでしょうね。
正体が割とあっさりだったのと、オチは急に出てきた感がちょっとありましたが、なかなか緊張感のある作品で面白かったです。
本作が出版されたのは(単行本)は2007年ですが、2012年4月には秋田でヒグマが脱走し、実際に人が襲われて亡くなるという事件が起きています。
2012年の事なのに全く私の記憶にありませんでした。
午前8時に6頭が脱走し、その日の16時には猟友会によって全頭射殺されたそうです。
元々飼育されていた生き物ということで少し複雑な気持ちですが、とはいえ猟友会の方々の手際はすごいなとも思いました。
ぼくとあいつの思い出
ぼくとくまの思い出。
何年か前、神奈川県の「ユーシン渓谷」に行ったときのこと。
「熊が出没してけが人が出ました」という看板が立っていたまでは良かったのですが、その日付が3日前くらいでした。
その日は「ユーシンブルー」という、川の綺麗な色合いを見に行くためのちょっとしたハイキングくらいの気分でしたが、ポケットに投石用の石を忍ばせたり、スマホで音を鳴らしたりしながら進むという緊迫した道中になりました。
ユーシン渓谷のあるのは、金太郎で有名な足柄(あしがら)辺り。
熊にまたがってお馬のけいこをしていたように、実際に昔から熊出没注意なエリアだったのかもしれませんね。
あのキャラクターに騙されている
目次でのネタバレを一応避けるため、「あのキャラクター」と書きましたが、「熊・クマ」のキャラクターについて。
クマの有名なキャラクターと言えば、「プーさん」と「リラックマ」の二大巨頭がいます。
あとは何かいますかねえ、クマキャラクター。
と考えてみると、「くまモン」もその両者に並べそうな格に成長している気もします。
テディベアもベアーでしたし、未だによく分からないダッフィーもクマ。
それにしても、クマキャラクターって結構身近に多いですよね。
しかし熊の持つ迫力や凶暴性がすっかりと丸くなって「ふんふん、ぼくはハチミツが食べたいんだよピグレット」とか「ごゆるりと」みたいなキャラクターになっています。
ライオンがキャラクターになると戦闘力は強いままなのに、クマだけは「戦闘?なんのこと?」的に大きく偽られているように感じます。
(そんなに積極的に人を襲わない臆病な生き物とも聞きますが)
プーさんが本気になったらクリストファーロビンやラビットはやられるでしょうし、ピグレットなんて一瞬にして…
ティガーなら多少は対抗できるのかもしれない?
リラックマは中身オッサンだとしても、キイロイトリじゃ勝てないだろうなあ。
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