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【読書感想】「流浪の月」。共依存は恐ろしい。(2020年本屋大賞受賞・ネタバレあり)

「流浪の月」 凪良ゆう 著 

 

 

買ってから読むまでの間に、たまたまネットを見ていたら、この本のWEB広告が流れてきました。

こんな画像です。

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この時点では、かなり嫌な予感がしたんですよね。

映画のTVCMで、試写会を終えた人たちの「ほんと感動しました!」「また観に来ます!」「絶対観て!」「〇〇サイコー!」みたいな感じで。

そんなCMを観た時点でその映画はもうつまらないので観ないのですが、本でも同じ気持ちになるものです。

なので、直接タイトルは書きませんが、神様は何年生とかそんなのはもう絶対読みません。

 

まあとはいえせっかく買ったわけだしと読み始め、結果としてはそれは杞憂に終わったので良かったです。

 

 

ネタバレを含みます。

「流浪の月」あらすじ

主人公は家内更紗(かないさらさ)。

公務員だった父と自由な性格の母の元に生まれ、彼女自身も自由奔放なまま幸せに育っていった。

しかしその幸せも長くは続かず、小学3年生のときに父は病死。

その1年後に母は、男と蒸発した。

 

親戚の家で引き取られた更紗だが、そこでの生活に窮屈さを感じていた。

また、その家の子ども・孝弘からは性的な扱いをされることで、両親との過去の暮らしとのギャップから、完全に空虚な子どもになっていた。

ある日、公園で本を読んでいた更紗だが、雨に見舞われても家には帰りたくないと感じていた。

そこへ「ロリコン」とあだ名が付けられた、いつも公園で小学生を眺めながら読書をしている青年から、「うちへ来ないか」と尋ねられ、ついていくことにした。

 

青年は佐伯文(さえきふみ)という19歳の一人暮らしの学生だった。

噂とは異なり、文は更紗に対して性的な目は向けず、淡々と共同生活が続いた。

文は、母親から判を押したような几帳面で真面目な性格に育てられており、逆に更紗は自由な生活を手に入れ、両者はお互いに染まっていき、信頼関係を築いていった。

 

2か月の共同生活が続き、少女行方不明事件として話題を呼んでいた頃。

文と更紗は油断して動物園に出かけた。

そこでメディアにも何度も報道されていた更紗に気づいた人が通報し、文は逮捕される。

「ふみいいいい!」と、更紗はやっと現れた理解者が連れて行かれてしまうことに抵抗したが、文は客観的には少女拉致監禁犯でしかない。

文の無罪を徹底的に主張したが、誰からも信用されることはなかった。

 

文との生活がなくなり、失意のまま親戚の家に戻った更紗。

相変わらず孝弘の「いたずら」が行われようとしたため、更紗はビンで孝弘を強打した。

その後、孝弘の罪を言えないまま、更紗に罪がかぶせられてしまう。

そうして少女時代を児童養護施設で過ごすことになった更紗。

 

14年後、彼女は大人になり、恋人と同棲を始めていた。

しかし、文との事件の記録や真実が伝わらなかったこと、過去の呪縛はいまだに彼女を縛り続けている。

 

ここから先はよりネタバレ含みます。

 

「流浪の月」のテーマ①気遣い

何がテーマというのか、一つに絞るのは難しそうなので、つらつらと書いていきたいと思います。

前提としてネタバレですが、14年後に更紗と文は再会しています。

 

ひとつは、「気遣いの難しさ」について。

更紗は、客観的には誘拐の被害者であり、「2か月間の監禁生活でいろいろされたに違いない」と暗黙または公然の認識がもたれています。

また文が逮捕されるときの更紗の絶叫シーンはネットに流出しており、それは14年経ってからもまだ残っています。

特徴的な家内更紗という名前も手伝って、彼女の事を知った人はどうあっても「(性)犯罪の被害者」という目で見て、過度な配慮をします。

しかし更紗は「文との生活は救い」であり、被害者とは何一つ思っておらず、そんな配慮を心苦しく、疎ましく感じていました。

 

まあここまでの話じゃなくても、気遣いのレベルって難しいですよね。

例えば、障害のある方をどう捉えるべきかというのは、私の中ではまだピンと来ていません。(もちろん個人差もありますので、一緒くたにはできませんが)

何が必要な配慮で、何が要らぬ気遣いなのか。

そこは付き合いの中で失敗をしながらも、距離感を上手く作っていくのが大事なんでしょうね。

 

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「流浪の月」のテーマ②共依存

更にネタバレですが、最終的には更紗と文は一般的な恋愛関係ではないものの、「二人で誰も知らないところで暮らす」という、ロマンチックな終わり方となっています。

誰も知らないとは、事件のことを知らず、家内更紗や佐伯文という名前に何の偏見もないことです。

 

それを前提に、もうひとつのテーマは、共依存について。

こちらは作品が意図しているかは分かりませんが、そこはかとなく怖いなあと。

更紗は自分の居場所を失ったことで佐伯文についていくことになり、結果として、彼の生き方に依存しました。

一方で、文は母親に厳しくしつけられたことに加え、自身への強烈なコンプレックスから、たまたま出会った少女時代の更紗の、居場所のない様子に共感を覚えました。

また、その後は更紗の自由奔放な考え方に惹かれ、その後の人生に大きな影響を与えました。

誘拐の被害者と加害者ですが、二人の中では居場所を失くした者同士の共同生活。

お互いを必要とし、必要とされ、そんな生活を19歳の青年と9歳の少女が2か月していました。

 

事件のことはネットでいつでも見られ、かつ他人から晒されることもあったので、単純に「14年前の事」とは言えないでしょう。

しかし、9歳の時に2か月過ごしただけの人を大人になっても思い、そしてそれを引き摺り続けるものなのでしょうか?

喫茶店で偶然、文を見かけた更紗はそこに通いつめ、後を付け回し、最終的にはマンションの隣に引っ越します。

かたや文も、更紗が施設を出た後の動向を調べ、その市に引っ越すなど、ちょっと異常な気がしました。

居場所のなかった更紗と文ですが、普通は誘拐という特殊な状況ではなく、もっと別の場所を探す・作り上げるものじゃないでしょうか。

真実を知っているという共通点以外に、一緒に居を転々としながら暮らしていくほどの絆があったのかなあとちょっと疑問に感じました。

 

お互いがお互いが補完し合うといえば聞こえはいいのですが、お互いが非常に強い共依存関係にあるように感じてしまいました。

相手がいなければ存在できないような関係。

特定の人に依存するのが怖い私としては、少し不気味なほどの強い関係だなと感じました。

ただ普通に読めば、「お互いに理解者がいたから良かった、ハッピーエンド」という作品とも言えます(まあここまで単純明快じゃないですが)。

 

少なくともバッドエンドよりは良かったかな。

 

感想その他

トータルとしての感想は、そこそこ面白かったかなあという感じです。

女性が主人公でしたが、心理描写は丁寧かつ明快でしたので、非常に読みやすい文章でした。

時代設定も現代ですし、情景も喫茶店や公園、ファミレスなど分かりやすく、会話や気持ちベースで文章が進んでいくので、300ぺージほどあっても3時間弱で読み切れました。

ちなみに前回読んだ「熱源」は登場人物や時代背景、情景などが現代日本とは結構離れているので、400ページちょいで6時間弱でした。

 

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余談:本屋大賞について思うこと

本屋大賞受賞作品って(不正や忖度がなければ)公平な賞だと思うんですよね。

その道の偉い人・権威のある人が選ぶ賞ももちろん価値はありますが、どちらかというとそれは書く側のプロで。

本屋大賞の選考は書店員なので、売る側のプロの立場です。

売る側の方の至上命題として、「売らなければ生き残れない」わけで、そういう意味では下手な本を選べば、一気に無価値になります。

そのうち死ぬワニの本なんかを推奨したら、一気にアウトでしょう。

 

 

 

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【世界中を敵に回しても~】

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【読書感想文】

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ふなっちょが受賞した感。

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