「予想どおりに不合理」 ダン・アリエリー著(熊谷淳子 訳)
従来の経済学が馴染まなかった話をしましたが、そこから発展して行動経済学には興味が持てました。
今回は入門書というよりも、行動経済学の具体例を学ぶような本で、体系的な学問書ではありません。
目次の紹介
本書の章立ては下記です。全部で15章。
- 相対性の真相
- 需要と供給の誤謬
- ゼロコストのコスト
- 社会規範のコスト
- 無料のクッキーの力
- 性的興奮の影響
- 先延ばしの問題と自制心
- 高価な所有意識
- 扉をあけておく
- 予測の効果
- 価格の力
- 不信の輪
- わたしたちの品性について その1
- わたしたちの品性について その2
- ビールと無料のランチ
タイトルだけみて分かるでしょうか?私は分からなかったです。
まず第一章の「相対性の真相」。
これは、比較対象に釣られやすいという心理の事です。
相対性の真相とは
具体的に本書で書かれている内容は、新聞の料金体系で
①印刷版のみ59$
②WEB版のみ125$
③印刷&WEB版の両方125$
という3種類のコースを提示すると、③が圧倒的な人気で、①はほとんど選ばれません。そして②を選ぶ人は(当たり前ですが)ゼロです。どうせ同じ値段なら、WEB版があった方が良いに決まってますからね。
しかし、「②WEB版のみ125$」を廃止して、①と③のみを提示すると、「①印刷版のみ59$」を選ぶ人が一気に増えたそうです。
つまり、②という「囮」を設置することで、新聞社は売上が増やせるということです。
これに近い具体例を挙げます。
例えば、飲食店のメニューで「松3,000円 竹1,500円 梅1,000円」とあった場合に、何となく(見栄も含めて)「竹 1,500円」を選んでしまうものです。
そんな気持ちが分かる人も多いのではないでしょうか?
「日本人は」という枕詞がよく付けられてますが、アメリカ人も同じような傾向があるようです。
飲食店で言えば「並・上・特上」などの場合にも、よく考えれば「並」で十分でも「上」を選んでしまうことがあるでしょう。
それが「相対性の真相」、つまり比較対象によって判断してしまい、本来の自分の合理的な意思決定が妨げられてしまうということです。
もちろん、「1,500円くらいでこの程度の料理を食べたい」と最初から思っていた人が自分のニーズに合った「竹」を選ぶのは、合理的な判断です。
無意識を自覚できるか
上記のような心理状態は、意識できていることもあれば、無意識のうちに判断してしまっている場合もあります。
ソクラテス言う所の「無知の知」ではありませんが、「無意識にこういう心理状態になっていたのではないか?」ということは、知識がなければ気が付くことはなかなかできません。
自分の購買行動やそれ以外の各種行動について、見つめなおすきっかけにもなるのではないでしょうか。
心理学と経済学と
心理学は学問の分類上、現在は文系科目に分類されていますが、本来は文理科目の間にあるべきだろうと私は思います。
医学とまでは行きませんが、人間の行動だけでなく病に至るまで、心理に影響される部分は多々あるでしょう。そこには社会学だけではなく、生物学や化学なども影響するでしょうから。さておき。
行動経済学も突き詰めれば心理学(厳密に言えば行動学ですかね)であり、心理状態を意識的、あるいは無意識に動かされて、経済行動(購入、労働など)に至るという学問です。
そう考えると、文系・理系という枠組みを混合した学問が心理学であり、行動経済学と言えるのかもしれません。
内容については、これから時々触れていきたいなあと思いますので、今回はこの程度で。
経済学についての知識は全く不要ですので、初心者でも中高校生くらいでも、行動経済学の入り口を開けられる本だと思います。文庫だから安いのも良いですね。
別の行動経済学の本も読んでみようかなあ。