「二十四の瞳」 壺井栄 著
太平洋戦争の前後の、女性教師と生徒たちの交流を描いた作品。
平和な暮らしが、徐々に蝕まれていく。
1961年の作品。
<目次>
あらすじ
小豆島の岬の村にある、小さな小学校。
そこは例年、新人の女性教師が着任する場所であった。
新たに赴任してきたのは、同じく新人の大石久子。
大正時代の女性にあって、洋服を着こなし自転車に乗る姿は、
田舎の村には刺激が強く、村人からは白い目で見られることも多かった。
しかし生徒達は、大石先生によく懐いていた。
12人の生徒達は、先生が怪我をして休んでいたとき、何キロも歩いてお見舞いに行った。
徐々に村の人にも受け入れられはじめた大石は、再び違う学校に赴任する。
おりしも日本の軍国化が進み、「一億総同胞」と言われる時代に突入。
学校教育も様変わりし、男の子達は軍人を夢見る時代であった。
以下は感想です。
大人は拒み、子どもは受け入れ
大人達は新しい人を拒み、子ども達は受け入れる。
大石先生の存在は、村ではそんな風に描写されています。
大正時代のお話ですが、現代にも通じるものがありますね。
田舎は「よそ者」を嫌う風習はありますが、都会の場合は嫌う以前に「無関心」なだけでしょう。
地域性に限らず、やはり子ども達の方は、偏見もない純粋な瞳で人を評価しているように思います。
偏見ではないがゆえ、素直な言葉で人を傷つけることも多いですけどね。
戦争描写は少ないけれど重い
戦争そのものの描写は少ないものの、中盤以降は全ての物事の背景に「戦争」が潜んでいます。
戦争の話というのは、聞いていて辛いものばかりです。
筆者の壺井氏は、二十四の瞳のあとがきにこう記したそうです。
くりかえし私は、戦争は人類に不幸をしかもたらさないということを、強調せずにはいられなかったのです。(昭和27年12月)
そういう時代だった、と一言で済ますには、重い経験だったと思います。
今でも戦争という武力でしか語れないことがあるのは虚しいですね。
揉めたら相撲で決めればいいのに。
恥ずかしながら知らなかった
前にもツイートしてましたが、角川文庫の「BIRTHDAY BUNKO」シリーズ。
私の誕生日である8月5日は、壺井栄さんの誕生日でもあります。
あとはマイケル富岡さんの誕生日でもあります。
という売り方に惹かれて買ったのがそもそものきっかけでした。
角川文庫より366冊出ている、誕生日ごとの作家本。
— GO (@GK_GK21) 2018年5月27日
私の誕生日は「壷井栄」という方。こんな企画がなければ出会うことはないので、買ってみた。
1899年生まれ。作品の舞台もその頃で、これも自分ではあまり読まない時代。
こういう売り方は、良い発見になるかもしれんのう😗#読書 pic.twitter.com/ct0vpEGOPH
壺井栄さんも二十四の瞳も知らなかったのですが、ご指摘いただいたところ、有名な作品(作家)だそうで失礼しました。
映画化もされてますし、
舞台となった小豆島では「二十四の瞳映画村」までありました。
小豆島といえばオリーブのイメージしかありませんでした。
こうした舞台にもなっていますし、離島という私の好きなジャンル。
近々に一度、行ってみたいものです。