「インシテミル」 米澤穂信 著
タイトルは「淫する」=度が過ぎる、などの意味があるようです。
あらすじなど
バイト雑誌に、とある求人が出された。
ある社会実験に参加するだけで、時給が「1120百円」というもの。
ある者は1120円の間違いだと感じ、ある者は高額を期待してバイトに参加することに。
主人公の結城は、中古車を買うためにバイトを探していたところ、須和名という完璧美人に見える女性から「このバイトはどう思いますか」と突然声をかけられた。
そんなきっかけで高額バイトを知った結城は、嘘でもいいやと軽い気持ちで申し込んでみる。
見事選ばれた結城は、お迎えに応じてアルバイト場所に案内されると、そこは閉鎖的な地下空間。
見知らぬ男女12人がそろうが、そこには須和名の姿もあった。
主催者でもある「クラブ」からは「時給11万2千円」で間違いない旨が伝えられた。
異常な高額であるが、その後の説明では「24時間どこでも監視付き」「人を殺せば報酬2倍」などの不穏な条件が伝えられる。
7日間のバイトで、わざわざ人を殺さずとも2千万円近くがもらえる、と12人は一度納得した様子であったが…
感想
いわゆる閉鎖空間でのデスゲームものです。
(私のデスゲームの認識があっていればですが)
殺人あり、ゲームのルールがあり、それを守らせる超技術のロボットあり。
地下空間に見知らぬ男女12名が集められ、謎のクラブや主人の指示に従い、武器を与えられ、お金をかけた命懸けのサバイバルをしていく話だったようです。
が。
米澤穂信氏の作品はそこそこ好きだったはずでしたが、映画化までされたこの作品は率直に言えばイマイチでした。(文庫で2010年発売と、だいぶ前の作品だからかもしれません)
元々軽薄なうえに、やたらと須和名(ヒロイン?)を持ち上げていて、せっかくの閉鎖空間での殺人ゲームという緊迫感が薄れ、終始違和感がありました。
特に後半は急に主人公の性格がさらに楽天的になり、雰囲気が変わったような…
随所でそうでしたが命懸けの緊迫感がなくなり、誰が犯人扱いされてもせいぜい人狼ゲームをやっていて「あーあ、狼扱いされちゃった。まあ仕方ないか」くらいの緊迫感に。
人物がそれぞれ深堀されず、伏線も何となくポッと出ては消え、最後の真相も何となくサラッと終わった感じ。
デスゲームものはいかに緊迫感があって、その緊迫感やルール決めに合理性があるのかということが重要かなとも思いますが、その辺がちょっとすっきりしませんでしたね。
まあ小難しい表現などはないので、読みやすいは読みやすいかな。
過去の読書感想