「心淋し川」 西條奈加
概要など
舞台は千駄木あたりにある心町(うらまち)。
そこにはほとんど流れが止まり、淀みの溜まった場所と称される小さな心淋し川(うらさみしかわ)が存在する。
そこの長屋街に暮らす様々な人物の日常にある、小さな不満や憂いなどが中心のお話。
閉塞感がありますが「誰の心にも淀みはある。それが人ってもんでね」という、単純な気持ちの割切ではない人情話が6章書かれている。
感想
舞台は江戸時代か明治初期?くらいですが、現代にも通じる話がほとんどです。
様々な話がありますが、共通するテーマとして「少し歪んだ愛情」があるように感じました。
分かり合えていなかった父と娘、障害がありつつ横暴な息子と母、息子を殺した犯人と過ごす日々、妾同士のライバル争い。
大きな盛り上がりも明るい話題も乏しい作品でしたが、それはそれでいいのかなと思える話でした。
時代物って少し読みづらい印象がありましたが、日本語的にも内容的にも読みやすかったです。
閉塞感と上にも書きましたが、今ほど移動の自由も手段もない時代。
徒歩で出かけられる範囲なんて極めて限定的ですし、おそらく休みの日なんて概念もそれほどなかったでしょう。
そうすると基本的には一つの町が全ての世界となり、物理的にも精神的にも閉鎖空間のような気分になりそうな気はしました。
心と書いて「うら」って読むんですね。
川のある街
何となくですが、川のある街に憧れがあります。
東京の隅田川、仙台の広瀬川のように広大な川もあれば、金沢のように川というより水路がある街。
災害リスクなどはさておいて、川や河川敷があったり水が流れている雰囲気があったりするのは何となく趣きがあります。
よく考えると私の近所にも川がありましたが、どぶのような茶色水で魚すら寄り付かないくらいなので、無い方がいいかなと思っています。
まあ私の心のように濁っているといえば、お似合いなのかもしれない。
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