「君が手にするはずだった黄金について」 小川哲 著
概要
主人公の小川は小説家。
冒頭は彼が就活をするか否かの状態で「あなたの人生を円グラフで表してください」というお題について考える。
ここは哲学的な部分が多かったので少し苦手な感じがしましたが、プロローグなので短めです。
そのほか、「君が手にするはずだった黄金について」を含めた全6編の短編集となっているが、全て主人公は小川です。
彼の高校・大学の頃の友人たちとの思い出や付き合いの中で、占い師、詐欺師らとも対峙していく。
感想まとめ
対峙していく…と書いたものの、そんなに動きのある小説や社会悪を裁くと言った内容ではなく、あくまで主人公・小川の思い出や思想が中心。
登場人物たちは黄金を手にしたりしそうになったりしていますが、それでも淡々と小川が語っているだけで、自分が関わっていてもかなり客観的に、他人事のように捉えています。
全体を通じて、小説家の心構えというかスタンスが結構登場するので、主人公に筆者がどれくらい投影されているんですかね?
ただ、前作で細かく紹介された部分も必ずしも自身の体験に基づかないようなので、あくまで創作でほとんどがフェイクな考え方なのかもしれません。
一番考えさせられたのは「2011年3月10日何してた?」という話。
何してたっけなあ。
文章は読みやすかったですし(最初の哲学者たちに少し面食らっただけで)、思考(独白っぽい)が中心の割にはクドさはそれほどなく、徐々にするすると読めていくようになりました。
小説家や詐欺師の知人はいませんが、リアルな存在感を感じる登場人物たちでした。
それも読みやすい一因なのかもしれません。
自分の円グラフ
何となく、今の時分を円グラフで表してみました。
特に解説はありませんし、意味もありません。
過去の読書感想